歪んだ月が愛しくて1
「そうだったんだ…。でも良かった、立夏くんがちゃんと戻って来てくれて。あ、お腹の具合は大丈夫?」
「……平気」
自分のことよりも他人を気遣える、未空と頼稀。
友達だから?
仲間だから?
理解出来ないわけではないが、そう言う感情はあの頃に置いて来てしまったので適当に話を合わせることにした。
「ごめん、迷惑掛けて」
「迷惑なんかじゃないよ。何かあったらいつでも相談してね」
「……うん」
空気を読むのって面倒だな。
これが集団行動のデメリットで俺が最も苦手とするものなんだよな。
「ま、兎に角皆座れよ。いつまで経っても飯食えねぇからさ」
俺達は何事もなかったように席に着くと既に注文した料理がテーブルに並んでいた。
いつの間にか未空は調子を取り戻したようで口から涎を垂らしながら「いただきまーす」と言って両手を合わせて料理に手を付けた。
「…………何、それ?」
目の前の料理に唖然とする。
Sランチは俺の想像を遥かに上回るほどでかかった。
胃もたれしそう。見てるだけで胸焼けするわ。
「……美味い?」
「うん!うほぉひひー!」
「いや、分かんねぇし」
「ダメだよ。口に入ってる時に喋っちゃ」
「うわっ、飛ばすなよ!」
「汚ぇ」
未空は口の中に食べ物を詰め込んでいるせいで何言ってるか分からなかったが、その満足そうな笑顔を見て少しだけSランチに興味が沸いた。
「おい、あんましがっつくなよ」
「また喉詰まらせちゃうよ」
「だーい丈夫、だいじょー……んっ、んんゔうううう!!!」
「ほら水っ!」
「言わんこっちゃねぇ…」
真っ赤な顔で喉に食べ物を詰まらせる未空がコップに入った水を一気に飲み干す。
俺はそんな未空の背中を擦って落ち着かせるが、他の3人は「いつものことだ」と言いながら笑っていた。
皆にとってはいつものことでも俺にとってはこんな風に誰かと話すのは久しぶりで何だかむず痒いような気持ち悪い気分だった。