歪んだ月が愛しくて1



「だから一発ぶん殴って目を醒させてやろうと思ったんだよ。それを九澄が止めたってだけの話だ」

「まあ、お前がりっちゃんに手を上げられるとは思えねぇけどな」

「お気に入りだもんね…」



リカのことを話す尊を見て複雑な気持ちになる。



「寝言は寝て言え」



(よく言うよ…)



尊はいつからリカのことを見ていたんだろう。
新歓での勝負からか、それとも白樺の一件からか。若しくは初めて皆にリカを紹介したあの時から尊はリカをずっと意識していたのかもしれない。
だとしたら一生の不覚だ。恋は盲目とはよく言ったもんだ。
尊の一番近くにいたのは俺なのに何で今まで気付かなかったんだろう。

尊はリカに惹かれている。
本人に自覚があるかどうか分からないけど傍から見たらそんな感じだ。
ああ、もう何で尊なんだよ。絶対勝ち目ないじゃん。
だからと言って簡単には諦められないし、てか寧ろ諦めるつもりなんてないし、でも尊の幸せは俺の幸せでもあるし…、ああもうっ、モヤモヤして気持ち悪い。
結局は自分の中で消化しきれない感情がごちゃ混ぜになってどうしたらいいのか分からないんだ。



「……ムッツリ」

「誰がムッツリだ」

「いだっ!何で聞こえたの!?この地獄耳!」

「お前の声がでけぇんだよバカ」

「お前も隠し事出来ねぇタイプだな」

「何?まだ引き摺ってたの?心せっま」

「煩ぇ!引き摺ってねぇよ!」

「ガキか」



……でも、まだいいか。



尊の気持ちをちゃんと確認したわけじゃないし、リカのこともまだ分からないことだらけ。
俺だってまだリカに話してないことがある。………色々と。
だからまだこの気持ちは俺の中だけで留めておこう。
いつか俺が本当の自分を曝け出すことが出来たら…、その時はこの気持ち悪い感情も少しはマシになってるかな。


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