歪んだ月が愛しくて1
「確かに俺も親衛隊のことは迂闊だったけど、でも自分でやるって決めたことだから…」
誰にも文句は言えない。
親衛隊を黙らせるには自分で何とかするしかない。
「それが神代会長の狙いなんだよ。お前にそう思わせることで変な罪悪感を抱かせて雁字搦めにして身動きを取れないようにする。逃げられないように追い詰めるようにジワジワと…。自分のお気に入りなら尚更だ」
この時、頼稀は何を考えてそう言ったのだろうか。
考えようともしなかった。
俺はいつも自分のことばかりで周りのことなんか何も見ていなかった。
「だからそんなんじゃねぇよ。頼稀は覇王をよく思ってないからそう思い込んでるだけだって」
「、」
だからこの時も何も考えないでただ感情に任せて言い放った。
途端、グッと強い力で引き寄せられた。
「いいか、お前は狙われてんだぞ!他の誰でもない覇王と関わったせいで!」
頼稀は俺のネクタイを強引に引っ張り力任せに壁に押し付けた。
まるで逃がさないと言わんばかりに顔の横には頼稀の両手が行く手を阻む。
その瞳には怒気の色が宿っていた。
「お前が何を勘違いしてるか知らないが覇王は良い人じゃない!地位と権力を振り翳し自分の身勝手な欲望のために平気で他人を利用出来るような奴等だ!そんな奴等にお前が肩入れする必要はねぇんだよ!」
滅多に声を荒げない頼稀の怒声がヒシヒシと肌に突き刺さる。
「……さっきも言ったがお前は狙われてるんだ。“鬼”だけじゃない、親衛隊にもだ」
「……だから、それは俺のせいだって。“鬼”に狙われてるのも自業自得だし親衛隊のことも自分で何とかするしかないと思ってるよ。誰も巻き込むつもりはない。もう二度と俺のせいで誰も傷付けさせない」
「何でお前はいつもそうなんだよ!そうやって自分だけが傷付けばいいとか思うな!もっと俺達を頼れよ!甘えろよ!」
頼る?
甘える?
「頼ってるよ」
“B2”は敵であるにも関わらず俺の正体を黙っててくれたり、“鬼”について色々と忠告してくれたり、親衛隊のことだって何だかんだ言っていつも気に掛けてくれて…、少なくとも俺の過去を知ってるアゲハと頼稀にはこれ以上ないくらい頼っているはずだ。
それなのに頼ってない?甘えてない?そんなわけないだろう。