歪んだ月が愛しくて1



頼稀Side





本人はあれで聞こえてないと思っているんだろうな。

それとも無意識か。



『勘違いさせないで…』



どっちにしてもバリバリ聞こえてんだよ。



立夏はいつになったら気付いてくれるんだろうか。
それが勘違いじゃないと言うことに。
でも俺は何も言えない。
「勘違いじゃない」と言い聞かせて素直に聞くような奴じゃないのは百も承知だし、奴等に植え付けられた真っ黒な染みはそう簡単に拭えるものじゃないことも分かっている。
奴等はそれだけのことを立夏にして来たのだ。



怒りで拳が震える。

何も出来なかった無力な自分に…。



準備室の掃除を終えた後、俺は立夏と別れて目的の場所へと向かった。
目的地は西棟にある、とある一室。
防音加工が施されたこの部屋は外に音が漏れることは一切ない。
つまり中で何があっても外に気付かれる心配はないと言うことだ。

ここは“B2”だけが使用することを許された特別な部屋。
紀田経由で理事長から特別に許可を得ているため例え理事長や覇王であっても使用することは出来ないし、覇王にあっては存在すら知らないだろう。
ここの鍵を持っているのは“B2”のメンバーのみ。
入ったら内側から鍵を掛ける。それがこの部屋を使用する時の鉄則だ。



誰かが言っていた。

ここは拷問室だと。


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