歪んだ月が愛しくて1



外から鍵を開けて中に入れば最初に耳にしたのは何かが壁に打ち付けられたような激しい衝撃音だった。



「テメー等の正体は分かってんだよ!うちに乗り込んで来た目的は何だ!?とっとと吐けやコラァ!!」

「まあ、吐きたくてもこの状況じゃ吐けないだろうけど」



そこにいたのは“B2”のメンバー2人。
そして猿轡を付けられ両手両足を拘束されたスキンヘッド達5人がいた。



「悪い、遅くなった」



俺に気付いたメンバーは待ってましたと言わんばかりにニヤリと口角を上げた。
その傍らでスキンヘッド達は何やら唸っていたが一旦無視だ。



「……他は?」

「他のメンバーは警戒に当たってますよ」

「まだ残党が残ってるかも知れませんから」



確かにスキンヘッド達が囮だとしたらその隙に攻め込まれる可能性もなくはない。そんなことになれば目も当てられない。
この2人は幹部候補なだけあって色々と察して動いてくれるから正直助かっていた。



「あの、彼は…」



メンバーの1人が躊躇うように声を出す。



「問題ない」

「良かった…」



その声は心から安堵したような柔らかいものだった。
先程までの罵詈雑言が嘘のようだ。



「人質の方はどうでしたか?」

「擦り傷程度だ。問題ない」

「あ、西川のこと忘れてた…」

「バカ?普通そっちの心配の方が先だろう?」

「仕方ねぇだろう。こっちは彼のことで頭一杯だったんだからよ」

「私情を挟むのはどうかと思うけど」

「し、私情じゃねぇよ!俺は総長や頼稀くんの言葉を代弁してだなっ!」

「はいはい、言い訳は見苦しいよ」

「言い訳じゃねぇよ!」



2人の言い合いを横目に俺は先程から唸りを上げるスキンヘッドを蔑むように見下ろす。
懺悔を言いたいのか、それとも神への祈りでも捧げたいのか、ほんの気まぐれからスキンヘッドの猿轡だけを外してやった。



「…はぁっ、テ、テメー等、こんなことしてただで済むと思ってんのか!?」



ああ、頭の悪い奴め。

形だけでも謝罪して反省したふりでもすればいいものを。



するとメンバーの1人がスキンヘッドの頭を鷲掴みにしてそのまま壁に打ち付けた。



「がはっ!!」

「こんなこと?」

「それはこっちの台詞だよ」

「まさか…、ただで済むと思ってんのか?」

「っ!?」



カタカタと小刻みに身体を震わす、スキンヘッド。

自分から仕掛けて来たくせに情けない。



「お、俺達が何したって言うんだよ!?人質は取った…けど、怪我させたわけじゃねぇのに何で…、何でこんなこと…っ」

「何で?」

「、」



少し凄めば酷く怯えた目がこちらに向けられる。


< 409 / 552 >

この作品をシェア

pagetop