歪んだ月が愛しくて1



「テメー等、誰に手出したか分かってんのか?」



俺はスキンヘッドの言葉に耳を傾けずその胸倉を掴んで上を向かせた。



「俺達は何も…っ、ただ恐極に復讐しようとしただけじゃねぇかよぉ!」



スキンヘッドの声が震えている。
そう思うと無性に笑えて来た。
それは俺だけでなくメンバーの2人も口角を上げて声を漏らした。



「くくっ、何それ。ウケんだけど。お前何にも分かってねぇんだな」

「大体復讐って何の?まさか恐極にいいように利用された腹いせ?」

「自業自得だろう。美味しい話ばっかに食い付くからこうなるんだよ」

「それは言えてる。目先のことばかりに気を取られているから自分達が犯した過ちに気付けないんだろうな。頭が悪くて可哀想に」

「“鬼”が聞いて呆れるぜ」

「な、何でそれをっ!?」

「煩ぇ」



俺はスキンヘッドの身体を床に叩き付けた。
両手両足を拘束されているスキンヘッドは受け身を取ることも出来ず無様にも芋虫のように床に這い蹲る。



「テメー等が恐極に復讐したいなら勝手にすればいい。煮るなり焼くなり好きにしろ。こっちとしてもそうしてもらった方が有難い」

「う、ぐっ」

「ただテメー等はやり方を間違えた」

「がぁっ、あ゛ぁあああ!!」



スキンヘッドの腹に何発も蹴りを入れながら平然と言葉を続ける。
軽く肋骨はイってるだろうが知ったこっちゃない。クソみたいな言葉を吐けるならまだまだ元気なんだろうよ。



それは一般人が見たら確実に通報されるような異様な光景だった。
偉ぶって自分をでかく見せることしか出来ない他の男達も自分が置かれている状況をやっと理解したらしく、目の前の恐怖に耐え切れず白目を剥く者もいれば声を出さず発狂している者もいた。



次は自分なんじゃないか、と。



「本当恐極だけを狙えば良かったのによ。そうすればこっちも余計な手間掛かんなかったのにな」

「彼のためなら手間なんて思ってないくせに」

「べ、別にそんなこと言ってねぇだろう!」



この光景を異様と思ってないのがここにも2人いたか。

まあ、スキンヘッド達から見たら俺達の方が異様なんだろうが。



「テメー等が間違えたのは三つ」



でもこれが俺の世界。
そしてお世辞にも綺麗とは呼べないこの世界で俺は見つけた。
傷付いた羽を隠して、心に巣食う真っ黒な染みと戦いながら賢明に生きようとする―――立夏を。



「一つは恐極の話に乗ったこと。二つ、“蝶”の住処を荒らしたこと。そして三つ…」



それを“鬼”が壊した。

立夏の生きる糧を傷付けてボロボロに壊した。



そのせいで立夏はまた…。



湧き上がるのは、怒り、後悔、悔恨、憎悪。



「テメー等が手出したのは、俺達の光だ」



それは紛れもなく自分自身に対する感情だった。


< 410 / 552 >

この作品をシェア

pagetop