歪んだ月が愛しくて1
「そう言えばやっぱリカって理事長と知り合いだったんだね」
「え、何急に?」
「だって昨日の侵入者達に理事長のこと知ってるって言ってたじゃん」
「……そうだっけ?」
「そうだよ」
よく会話の内容まで覚えてるな。
てかいつから見てたんだよ。
「それに理事長のこと“文月さん”って呼んでたし」
「……知ってるけどそれだけだよ。別に仲良くないし」
「そうなの?名前で呼んでるのに?」
「それは何となく…」
……あれ?
そう言えばいつから文月さんのことを“文月さん”って呼んでたっけ?
だって昔は…―――。
「え、立夏くんって鏡ノ院理事長と知り合いだったの?」
「ああ、だから聖学に来たとか?」
「うん…」
『ふーくんなんて―――』
「で、その変なあだ名と立夏に親衛隊が出来るのは何か関係があるのか?」
引き込まれそうになった寸前のところで頼稀の声により思考が浮上する。
変なあだ名で悪かったな。俺だって不本意だよ。
「関係大有り。あの新歓以来立夏の人気が急上昇してんだから」
「元々可愛い立夏くんに格好良い要素がプラスされちゃったからね」
「そうそう。皆の見る目が一気に変わったなよ、俺の眼鏡ちゃんなのに」
「だから眼鏡じゃないって。本体みたいに言わないでくれる?」
「何で?眼鏡可愛いじゃん。それって立夏のトレードマークだろう」
「嫌だよ、こんなトレードマーク」
よしよしと俺の頭を撫で回す希だがそれで誤魔化されてやるほど単純じゃないからな。
「………何か、嫌だ」
不意に未空がボソッと呟く。
聞こえるか聞こえないかの微妙な音量だったのに頼稀はそれを聞き逃さなかった。
「何が嫌なんだよ?」
「だって、一番最初にリカを見つけたのは俺なのに…」
プイッと、未空は顔を背けた。
「………は?」
どう言うこと?
「あー…」
「ガキだな」
「もう未空くんってば何拗ねてんの?」
「え、未空拗ねてんの?何で?」
「す、拗ねてない!ただ…っ」
「ただ?」
「っ、」
俺は未空の顔を下から覗き込む。
すると未空はほんのりと頬を染めて渋々答えた。
「……リカのこと、何も知らないくせに、リカを語って欲しくない」
「え、」
………えっと、どゆこと?
ちょっと意味が分からないんだが誰か説明プリーズ。
するとそんな俺に気付いた3人が助け舟を出してくれた。
「未空、男なんだからはっきり言っちまえよ。俺のリカを変な目で見るなって」
「なっ!?」
「やっぱり拗ねてたのか」
「だ、だから拗ねてないってば!」
「ふふっ、未空くんって子供みたいだよね」
「清々しく悪口じゃん!」
んー…イマイチよく分からないが、これは言葉で理解するよりフィーリングってこと?空気読んで察しろってこと?
だとしたら何となく分かった気がする………かも。
「人気者も辛いな」
「……それって誰のこと言ってんの?」
「君しかいないでしょう、眼鏡ちゃん」
「立夏くんは可愛いもんね」
「だから可愛くねぇって。皆して眼科行った方がいいんじゃねぇの?」
「眼科行った方がいいのはお前だよ」
「もうその顔でこっち見ないで…(可愛くて辛い)」
「何で!?」