歪んだ月が愛しくて1



「頼稀、リカと会ったことあんの?」

「……いや、覚えてねぇな」

「忘れてんじゃね?」

俺が(・・)忘れると思うか?それに立夏と会ってたら嫌でも忘れらんねぇだろう」

「まあ、確かに」

「そうだね。立夏くん可愛いもん」



葵さん、それは今関係ないと思うよ。



「そっか…。ごめん、変なこと聞いた」

「いや」



俺の勘違いならそれでいい。
寧ろ勘違いであって欲しくて確認した。



「てか、立夏って見た目と性格にギャップあり過ぎじゃね?」

「ギャップ?」

「うん。一見眼鏡掛けてるからガリ勉っぽいのに話してみるとクールって言うか……口が悪い?」

「それだと悪口みたいだよ」

「そう?だったら……毒舌?」



一緒じゃん。



「でもギャップは分かるかも」

「何が?別に普通だけど」

「だってあの未空くんの手を振り払ったんだよ。僕吃驚しちゃった」

「それな。近付くなオーラ超出てたし」

「……俺、触られるの苦手で」

「そうなの?」



未空は下から覗き込むような形で俺と目を合わせて来た。



「……うん」



嘘ではない。
未空の距離感が少し苦手だった。
無遠慮にこっちに踏み込んで来るその感じが。



「良かったぁ」



そう言って未空はホッとした表情を浮かべた。



「何が?」

「だって俺、リカに嫌われたと思ってたからさ」



へらっと苦笑する、未空。

でも意味が分からなかった。



「俺に嫌われてないから良かったなの?」

「うん。俺リカには嫌われたくないもん」

「……何で?」

「そりゃリカのことが大好きだからに決まってんじゃん」



聞かなきゃ良かった。
いや、聞いて損したの方が正しいか。
そう思ったのは未空の発言が俺の予想を遥かに上回るものだったからだ。悪い意味で。



「リカは俺のこと嫌い?俺はリカのこと大好きだよ」

「普通」

「えー、そこは俺も大好きって言うところじゃん」

「ごめん、空気読むのも苦手で」



好きか嫌いかと問われれば俺は選択肢にない普通と答えるしかない。だって好きでも嫌いでもないから。
どうでもいい奴。それが俺の正直な回答だが、それでは可哀想だと思い少しオブラートに包んで普通と答えたのだ。


< 42 / 552 >

この作品をシェア

pagetop