歪んだ月が愛しくて1
「あ、そう言えば管理人室の前に段ボールが置いてあったよ。もしかして立夏くんの荷物じゃない?」
「そういや、アゲハさんがそんなこと言ってたな」
「俺の?てかアゲハさんって誰?」
「アゲハはC組の寮長だよ」
「寮長?」
「高等部はS・A・B・C・Dの五つのクラスに別れてるんだけど、その代表者5人が寮長としてこの学生棟での全責任を任されているんだよ」
「聖学には寮内を管理する人間がいない。その代わりの寮長だ」
「ふーん…」
つまりそのアゲハさんって人がC組の頭か。
でもその名前どこかで聞いたことがあるような…。
「んじゃ、荷物運ぶの手伝うわ」
「大丈夫。自分ででき…「俺も手伝うー!」
自分で出来るから…、と言って断ろうとしたのに未空はそれを許さんと言わんばかりに俺の言葉を遮った。
「……自分で運べるからいいよ」
「嫌だ!手伝う!」
「嫌って…」
「いいじゃん皆で行けば。荷物がいくつあるか分からないんだし皆で運んだ方が早く終わるぞ」
「そうそう!1人より5人の方がお得だよ!」
俺には何の得もないんだが。
「行くか」
「僕も手伝うよ」
「アオは紀田ちゃんに呼ばれてなかったっけ?」
「あっ!」
「葵は紀田のところに行け。立夏のことは俺達で何とかするから」
「ごめんね。僕も先生の用事が終わったらすぐ戻って来るから」
「いや、無理しなくていいから」
それから葵は走って学生棟を飛び出した。「絶対に行くからね」と言って手を振りながら。
別に来なくていいのに。
「お、これだこれ」
俺達は談話室から場所を移動して同じく学生棟の1階の一番奥にある管理人室にやって来た。
管理人室と言うからには小窓が付いた受付みたいな部屋だと思っていたが、外から見ると一見ホテルの客室のように見える。当然小窓も付いていない。ただ扉の中央には金のプレートに黒字で「管理人室」と記されており、その下には「C」と書かれた木製の札が掛けられていた。
視線を下方に向けると管理人室の前には段ボールが三つ置かれていた。
これが俺宛の荷物か。
宅配便ってことは送り主は恐らく…。
「誰からだ?」
「えーっと、ち…ちち、ち…たね…?」
「お前には聞いてねぇよ」
「ちたね?そんな奴知らねぇけど…」
段ボールに貼られた伝票を見ると、送り主は―――。