歪んだ月が愛しくて1
「あ…」
それは手紙だった。
黒い封筒に白字で俺の名前が書いてある。しかも5通も。
無駄に手が込んでてご苦労なこった。
「またか?」
そんな俺の手元を頼稀が横から覗き込む。
「それで何通目だ?」
「そんなの数えてるわけないじゃん」
「……いつからだ?」
「……………てへ♡」
「はぐらかしてんじゃねぇよ」
頼稀がそう言うのには理由があった。
あの新歓以来俺宛ての差出人不明の手紙が机や下駄箱に入れられるようになったのだ。
「送り主は?」
「知らね」
「まあ、目星は付いてるけどな」
「なら聞くなよ」
封筒はいつも無記名だから送り主が誰なのかは分からない。
封を開けてすらいないから手紙の内容すら分からないがどうせくだらねぇことが書いてあるんだろうな。まあ、誰だっていいけど。
「あれ、立夏くんまた?」
「結構しつこいな」
「え、またって何のこと?」
「立夏にラブレターだってさ」
「はぁ!?ラ、ラララブレター!?」
そう言って未空は身を乗り出して俺の机を両手で打ち付ける。
希の冗談を真に受けたせいか酷く動揺しているように見えた。
「ちょ、ちょちょっとリカ!ラブレターってどゆこと!?」
未空は凄い剣幕で捲くし立て俺の両肩を激しく揺さぶる。
「み、未空落ち着いて!ラブレターじゃないから!」
そんなの貰ったことない。
「じゃあその手紙は何!?果たし状!?」
「は、果たし状って…」
「ぎゃはははっ!は、果たし状と来たか!未空がアホ過ぎてヤバいウケる!」
「ダメ、僕もう……ぷっ、あはははっ!」
「くくっ」
「笑い事じゃないよ!果たし状じゃなかったらやっぱりラブレターってことじゃん!」
「だから違うって。これは…」
「これは!?」
空色の瞳を細めてジリジリと俺に詰め寄る、未空。
そんな未空から逃げるように俺の身体は無意識に後退する。
「……何でもない」
改まって話すことじゃない。
こんな手紙気にするだけ時間の無駄だ。
だから説明を省こうとしただけなのに未空はそれを許してくれなかった。