歪んだ月が愛しくて1



手紙のことは誰にも話すつもりはなかった。
だって話したところでどうにもならないし、どうにかしようとも思っていない。
ただ時間と共に風化すればいいと思っていた。頼稀達にはバレてたみたいだが。
それに未空に話せばこうなることは分かっていた。
白樺や月の時のように話が大事になりそうだし、会長達と一緒になって犯人捜しとか言い出しかねない。何だかんだ言って他の3人も結構悪ノリするから安易に便乗しそうだし。
何とも思ってないからこそ騒がれたくなかった。
こんなもの気にするだけ無駄だ。キリがない。
それにもうこれ以上彼等に迷惑を掛けるのは本意じゃなかった。



「リカ!いい加減教えてよ!」

「だから、別に大したもんじゃ…」



不意に未空のスマートフォンが鳴った。



「尊?」



どうやら電話ではなくメールのようだ。
未空は何度かスマートフォンを操作すると。



「……ごめん。尊に呼ばれたからちょっと行って来る」

「会長に?」

「うん。兎に角早く来いって」

「立夏は?」

「呼ばれたのは俺だけだからリカはここで待ってて。すぐ戻って来るから。帰って来たらさっきの手紙のことちゃんと説明してもらうからね!」

「はいはい…」



未空は「行って来るね」と元気一杯な声を上げて教室から出て行った。
そこにタイミング良く授業終了のチャイムが鳴り響く。



「何とか誤魔化せたな」

「あれって誤魔化せたの?」

「帰って来たら問い詰められるパターンじゃね?」

「だよね」

「それだけ立夏くんのことが大好きなんだよ、未空くんは」

「……別に」



俺は葵の言葉に素直に頷けなかった。
それは嬉しい言葉のはずなのに何故か責められているような感覚だった。


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