歪んだ月が愛しくて1
「てか何で覇王親衛隊がこんなところにいんだよ?」
「何でだろうね」
「何で他人事?」
「だって俺関係ないし」
「(危機感なさ過ぎだろう…)」
「案外藤岡くんを捜してたりして…」
「えっ?」
「冗談だよ」
「安心して。例えあっちが藤岡くんを連れ出そうとしても俺達が藤岡くんを守るからさ」
「………」
守るなんて簡単に言わないで欲しい。
それがどんなに難しいことかを俺は知っているから。
「……守るなんて、大袈裟だよ」
俺は汐の言葉に苦笑しながら適当に誤魔化した。
すると汐は険しい顔をしてこう言った。
「大袈裟なんかじゃないよ。藤岡くんにはこれ以上傷付いて欲しくないんだ」
「え…」
どう言うこと?
何で、汐がそんな顔…。
「それに頼稀くん達がいないなら尚更俺達の出番でしょう?」
「……何で、そこで頼稀が出て来るの?」
「だって俺達は…」
そう言い掛けた時、汐の言葉を遮るようにガラッとドアが開いた。
俺達の視線は自然とドアの方へと向く。どうやらドアを開けたのは先程話に出た覇王親衛隊副隊長の我妻先輩のようだ。
「……あ」
目が合った。
すると我妻先輩は真っ直ぐ俺の方へと向かって来た。
え、俺?
と内心思ったが相手が覇王親衛隊なら俺に用があっても可笑しくないか。
半ば諦めモードで椅子から立ち上がろうとした時、汐は俺の肩に触れて小さな声でこう言った。
「藤岡くんは座ってて」
「え?」
そう言って汐と遊馬は俺の身体を隠すように立ちはだかる。
そんなバリケードの前でピタッと足を止めた我妻先輩が汐と遊馬と対峙する。
「なん、で…」
分からなかった。
何で汐と遊馬がそんなことをするのか。
でも2人の顔があまりにも真剣で強張っていたからそれ以上口を挟むことが出来なかった。
「………」
近くで見ると我妻先輩の高さが一層際立つ。
汐と遊馬も身長は高い方なのに頭一個分違う。
何より3人の存在感が威圧的な空気を放っていた。
現役モデルの我妻先輩は身長だけでなくスラリとした体型と整った顔立ちを併せ持ち、それに引けを取らない赤系ブラウンの短髪に笑った時に見せる八重歯が特徴の汐と、毛先だけパーマっ気の明るい色の茶髪に唇の左下にある黒子が妖艶な色香を漂わす遊馬はそれぞれ種類の違うイケメンだ。そんな3人が教室のど真ん中で睨み合ってたら何事かと思ってクラスメイト達が空気を読んで言葉を閉ざすのも無理はない。
「………」
長い沈黙が続く。
息が詰まりそうな重たい空気。
外野ですら声を出そうとしない。
そんな空気を打ち破ったのは意外な人物だった。
「一緒に来てくれないか?」