歪んだ月が愛しくて1
「分かったらとっとと帰れ。アンタのせいで外野がうぜぇんだよ」
「ここにいたって藤岡くんは行き…「行きます」
俺の言葉に汐と遊馬がバッと振り返る。
「「はぁあああああ!?」」
「うわっ、息ぴったり」
「ぴったりじゃなくて!行くって…、まさか親衛隊について行くつもり!?」
「うん」
「……何で?藤岡くんがついて行く必要はないよ」
「だってこの人俺が行かないと大人しく帰ってくれそうにないし」
「でもっ!」
「それに外野があんなに集まってたらクラスの人達にも迷惑じゃん」
「それでも何されるか分からない連中にのこのこついて行かなくたって…」
すると遊馬の言葉を我妻先輩が遮る。
「……しない」
「あ?」
「話がある」
「話?」
「ハッ、そんなこと言ったってどうせテメー等の思い通りにならなかったら実力行使に移るんだろう?今更信用出来るわけねぇだろうが」
「………」
「……ここでは話せないことなんですか?」
「……ああ」
「分かりました。どこに行けばいいんですか?」
「……案内する」
「はい」
「「いやいや、はいじゃなくてっ!!」」
汐と遊馬は俺の腕を片方ずつ掴んで制止する。
2人は何をそんなに心配しているのか、まるで頼稀のような過保護ぶりに思わず苦笑する。
「大丈夫、俺強いし」
「それは知ってるけどそう言う問題じゃなくて!」
「もし藤岡くんに何かあったら!」
「何かあったら?」
「っ、」
グッと、汐は至近距離にいる俺と目が合うと何故か言葉を詰まらせた。
ああ、笑っちゃいけないんだ。
この2人は本気で俺のことを心配してくれてるのかもしれない。
「……大丈夫」
こんな俺なんかのためにどうして…。
分からない。
「それにこの人は何もしないと思うよ」
「何を根拠に…」
「親衛隊を信用しちゃダメだ!」
「………」
根拠はない。
言うなれば勘だ。
でも…、
「信用してるわけじゃないから」
その瞬間、3人の肩がビクッと跳ねた。
心なし我妻先輩の顔色が青白く見える。
「頼稀達には適当に誤魔化しといて」
俺は汐と遊馬をこの場に残して我妻先輩と一緒に教室を後にした。
一方、教室に取り残された汐と遊馬は俺の殺気に当てられて動けずにいた。
「ビビッ、た…」
「あれが藤岡くんの殺気か…」
「どうしよ…、俺動けねぇんだけど…。頼稀くんに怒られっかな?」
「殺されるの間違いだろう」