歪んだ月が愛しくて1



「こんにちは御手洗さん。お久しぶりですね。久しく見ない間に随分と丸くなられたようで」

「お陰様で。アンタ等も相変わらずみたいだね」

「ありがとうございます」

「褒めてないよ」



刺々しい口調と雰囲気に無意識に口元が引き攣る。



女王様が2人も…。
美人が凄むと怖いって本当だな。下手に口を挟めない。
てかこれ俺いらなくない?もう帰っていいかな?



「で、うちのクラスメイトに何の用?」

「藤岡さんにはこれまでの無礼の数々をお詫びしたくて私がここに招いたんです」

「……珍しいこともあるもんだね。アンタが他人をここに招き入れるなんて」

「藤岡さんとは何れゆっくりとお話ししたいと思っていたので」

「ゆっくりね…」

「御手洗さんこそどうしてこちらに?貴方が毛嫌いしている私の茶室に何の用ですか?」

「言ったでしょう、藤岡は僕のクラスメイトだって。藤岡が勝手にいなくなったせいでどこぞの猿がキーキー喚いて煩いんだよ」

「猿?」

「……まさか」



ああ、あっちの方が早く帰って来ちゃったか。急ぎの用事っぽかったからもう少し時間が掛かると思ったのに。
頼稀達にも何も言わないで出て来たから相当怒ってるだろうな。汐と遊馬に八つ当たりしてなきゃいいが。



「そう言うわけだから藤岡は貰ってくよ」

「え、貰うって…」

「煩い。黙ってついて来な」

「は、はい…」



御手洗くんは俺の腕を取って歩き出す。
我妻先輩の横を通って茶室を出ようとした時、御手洗くんは何かを思い出したかのように動きを止めた。



「アンタもいい加減こう言うのやめたら?見ててうざったいよ」

「こう言うのとは?」

「アンタが今まで藤岡にやって来たことだよ」



……やっぱり。

御手洗くんも親衛隊の嫌がらせには気付いてたか。



「お言葉を返すようですが、あれは彼等が独断で動いたことで私が指示してやらせたわけではありませんよ」

「ハッ、どうだか」

「信用して頂けないようですね」

「当然でしょう。アンタが下の動きを把握してなかったとは思えないし少なくともこうなることくらい予想出来たはずだ。それに人のせいにすんのもどうかと思うけどね。だから嫌いなんだよ、アンタ等みたいな陰湿な臆病者集団が」

「………」



御手洗くんは乱暴な言葉で無遠慮に桂木先輩を追い詰める。
そこまで言わなくてもいいのにと思う反面、安易に2人の間に入ってはいけないような気がした。



「……何故、御手洗さんが藤岡さんを庇うのですか?」

「は?」

「御手洗さんだって本当は藤岡さんが妬ましいのでしょう。他人に興味を示さない尊様が彼にだけは笑顔を見せ心を開き手元に置いている。転入して来たばかりの彼を」

「……言ったはずだよ。僕はただアンタ等みたいに影でコソコソしてる奴が嫌いなだけだって」

「では彼を認めるのですか?」

「認めるも何もアンタ等に決定権はないはずだけど。勿論僕にも…。全ては尊様が決めることだ」

「嘆かわしい人」

「アンタもね」



うーん…。

何を言ってるのかさっぱり分からん。



「藤岡さん」

「な、何っ?」



桂木先輩に名前を呼ばれて思わず身構える。



「先程もお話ししたように私達が覇王様を想う気持ちは未来永劫変わりません。そしてそこにいる御手洗さんも又尊様に想いを寄せる1人だと言うことを忘れないで頂きたい」

「………」



そんなこと分かってますよ。

新歓の時ちゃんと牽制されたからね。


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