歪んだ月が愛しくて1
「どう言うことか説明してね♡」
「………(怒)」
「す、すいませんでした…」
覚悟ってそう言うことか。
「何に謝ってんのかなぁ?親衛隊について行ったこと?それとも俺を置いて1人でのこのこついて行ったこと?」
みっちゃんと一緒にクラスに戻ると、そこには不気味なくらい満面の笑みを浮かべる未空と般若の形相で腕を組みながら仁王立ちする頼稀が俺を待ち構えていた。こっわ…。
「ま、全部許さないけどね♡」
語尾のハートが余計に恐ろしい。
「大人しく待ってろって言ったよな?」
「……はい」
「汐と遊馬にも止められたよな?」
「はい」
「だったら何でついて行った?」
「ごめんなさい」
頼稀の有無を言わせぬ問答に自然と身体が委縮する。しかも顔がマジで怒ってた。
そんな頼稀の後ろには汐と遊馬が床に正座させられているのが見えた。うわぁあああ、本当ごめんなさい。
「だから覚悟しなって言ったでしょう」
「すっっっごく反省してる。モウゼッタイニシマセン」
「風魔、コイツ全然反省してないんだけど」
「あ?」
「嘘うそうそうそぉおおお!スゲー反省してるから!猛省してるからぁあああ!」
御手洗くんの腕に自分の腕を巻き付けて猛省していることをアピールするとどこからか天使達の声が聞こえて来た。
「立夏くん、怪我はない?」
「何もされなかったか?」
「葵!希!」
まさに救世主。
葵と希は頼稀の後ろからひょっこりと顔を出して俺の無事を確認するためにぺちぺちと身体に触れる。
2人の登場で頼稀の怒りのボルテージが若干下がったような気がして改めて2人の偉大さに感謝感激雨嵐……と思いきや。
「藤岡くん大丈夫だった!?怪我はない!?」
「どっか痛いのか!?」
「まさかアイツ等に何かされたんじゃ…、」
………うん?
「アイツ等に何されたの!?カツアゲ!?脅迫!?」
「リンチ!?」
「まさか、レ、レレ……レイプっ!?」
はい?
「アイツ等、俺達のプリンセスになんてことを…っ!!」
「女神が穢されたぁああああ!!」
「ちっくしょぉぉおおおお!!」
……何か、話が飛躍してないか?
「クッソ、親衛隊の奴等め!藤岡くんによくも…ぶっ殺してやる!」
「今日と言う今日は絶対許さねぇ!」
「俺達で藤岡くんの敵討ちだ!」
「おう!やってやろうぜ!」
「打倒覇王親衛隊だ!」
「「「「「おおぉぉおおおお!!!!」」」」」
いやいや、何の敵討ちだよ。
俺ピンピンしてんだけど。
「あ、の…」
何とかして誤解を解かないと色々とマズい気がする。
そう思って遠慮がちに声を出すと横からみっちゃんの声が聞こえて来た。
「これで僕が言ったこと分かったでしょう?」
『風魔達だけじゃない。クラスの奴等も君には直接言わないけど、君が変なことに巻き込まれる度に心配だとか俺達で何とかして出来ないのかとか言って僕に泣き付くから正直うざったいんだよ。さっきだって仙堂がキーキー猿みたいに喚いたから一発ぶん殴ってやったよ』
「……う、ん」
「だったら君がやらなきゃいけないことあるよね?」
「………」
ぎゅうと、拳を握り締める。
分かってるよ。
俺がやらなきゃいけないことは今までずっと目を背けていたことだ。
今になってそのツケが回って来るとは…、一層のこと自業自得だと笑ってくれ。
そうすれば少しは気持ちが落ち着くのに…。
ポンッと、誰かの手が俺の肩に触れた。
「何、怖気付いたの?」
みっちゃんの言葉が背中を押す。
意地が悪い言葉でフッと鼻で笑われたが確かな勇気をもらえた気がした。
「……まさか」
もう何も知ろうとしなかった俺じゃない。
例え手遅れだとしても伝えなくちゃいけないことがある。