歪んだ月が愛しくて1
「あのっ、き、聞いて欲しいことが、あります…」
俺の声にクラス全員の視線が集中する。
未空と頼稀もちょっと驚いた顔をして俺を見ていた。
「……俺、何もされてないから。何かお茶会みたいなのに呼ばれただけでみっちゃんが来てくれたから少し話しただけですぐ帰って来たんだ。だから皆が想像するようなことは何もなかったよ」
呼吸が震える。
喉が、声が、身体が震える。
静まり返った教室内に俺の声だけが響いている。
自分でも緊張してるのがよく分かる。
「だから、その…」
伝えたいことは沢山あるのに考えが全然纏まらない。
これでは俺が何を伝えたいのか皆に分かってもらえないかもしれない。
……でも、分かってもらえなくてもいいか。
今更分かってもらいたいなんて烏滸がましいな。
「大丈夫」
「、」
その声が俺の消極的な思考を遮った。
「もう諦めないんでしょう?」
「み、ちゃん…」
……そうだ。
皆に分かってもらえなくても、手遅れだとしても俺は伝えなくちゃいけない。
こんな俺なんかを知ろうとしてくれた皆の気持ちに応えたい。
それが今の俺に出来る唯一のことだと思うから。
スッと、大きく息を吸って深呼吸する。
「……ごめん。俺のせいで皆に迷惑掛けて」
「め、迷惑なんかじゃないよっ!」
「そうだよ!クラスメイトの心配するのは当たり前だよ!」
俺の言葉に皆が口々に声を上げる。
さっきまでの沈黙が嘘みたいだ。
「リカ…」
「………」
不意に未空と頼稀が険しい顔を見せた。
……ああ、それで怒ってたのか。
その表情の理由がやっと分かった。
今になってこんな簡単なことに気付くなんて俺って本当バカだ。
伝えたいのは「ごめん」じゃない。
「ありがとう」
その気持ちだけ。
「こんな俺のことを心配してくれて。俺のこと、知ろうとしてくれて…」
……緊張する。
自分の気持ちを伝えるだけなのに本当情けない。
「俺は皆のことを何も知らない。知ろうとも思わなかったのに、それなのに…皆はこんな俺をクラスメイトの一員として見てくれた。それに気付けた時、凄く…凄く嬉しかった」
ゴクリと息を飲む音がやけに大きく聞こえた。
「俺も、皆のことが知りたい」