歪んだ月が愛しくて1
「……もう、遅い?」
寂しそうな声にハッと我に返る。
それを合図に真っ先に動いたのは案の定コイツだった。
「ぜ、全然遅くない!遅くないよっ!寧ろもっと俺のこと知ってぇえええ!!」
「ちょっ、未空タンマ!ストップ!」
俺は立夏に向かって突進する未空を寸前のところで捕獲する。犬か。
「ワンパターンだな」
「未空くん、抜駆けは禁止だよ!」
「まあ、気持ちは分からなくないけどな」
希が言うことは尤もだ。
未空の気持ちは分かるがそうはさせるか。
「ふ、藤岡くんが、俺のことを知りたいって…っ」
「バカ!お前のことじゃねぇよ!」
「はぁ!?お前のことでもねぇからな!!勘違いすんなよ!!」
「ヤバい!ツンデレ最高!」
「ああ、ほんっと可愛過ぎるぅ!!うちの女神マジパネェ!!」
「俺のことも知ってくれぇぇえええ!!」
……まあ、そうなるはな。
「よーし!こうなったらC組全員で“藤岡立夏防衛隊”を結成するぞぉ!!」
「「「「「おおおおおう!!!!!」」」」」
おい、何でそうなる。
「まさか、あの藤岡くんが…」
「よ、頼稀くん!どう言うことだよこれ!?」
汐と遊馬は床に正座しながら小さな声で尋ねて来る。
暢気な奴等め。
自分の状況理解してんのかコイツ等?
「……知るか。俺じゃなくて本人に聞けよ」
「それが出来ないから頼稀くんに聞いてんじゃん!」
「シャイか」
「汐は藤岡くんラブなんですよ」
「おい、遊馬っ!?」
「あ?」
「ち、違うよ!頼稀くんが思ってるようなことじゃないからね!」
「ラブでもライクでもどっちでもいいけどもう少し音量下げたら?本人に聞こえるよ」
バッと、汐は御手洗の言葉に慌てて口元を抑えた。
その隣で遊馬は「もう遅いんじゃない?」と言って更に汐の不安を掻き立てる。
「あれはお前の仕業か?」
「人聞きが悪いね。僕はただ君達の言葉を代弁してあげただけだよ」
「……そうか。悪かったな」
「別に。僕は一般論を言ったまでさ」
「損な役回りだな」
「それは君も一緒だろう」