歪んだ月が愛しくて1
立夏と御手洗が何を話したかは定かではないが立夏の変わりようからして大分説教されたに違いない。
多少荒療治でも立夏にとって良い方向に進んだのなら結果オーライか。
「ありがとな」
すると御手洗は驚いたように目を丸くさせた。
「……意外。余計なことするなって言われると思ったのに」
「余計なことなんて思ってねぇよ」
「でも本心では感謝もしてない。違う?」
「いや、感謝してるさ。ただ…」
「ただ?」
「……アイツには、もう傷付いて欲しくなかっただけだ」
もう二度とあの日を繰り返させないためにも余計なものでアイツの心を惑わさないで欲しかった。
心穏やかに過ごして欲しかった…、なんて言ったら笑われるだろうがな。
「……随分と過保護なんだね。仙堂みたい」
「アイツと一緒にすんな」
「君が佐々山以外に執着するとは思わなかったよ」
「……俺には立夏を守る義務がある。誰にも邪魔させない。そのためなら俺は何だって出来る」
「おっも」
「何とでも言え」
他人に理解されたいとは思ってない。
いや、されたくもない。
『―――同情?』
……違う。
これは風魔の罪だ。
そして俺にはそれを背負う義務がある。
立夏信者のアゲハさんでも知らない。
きつく閉ざされた蓋は誰にも触れられないように厳重に鍵を掛けている。
「風魔」
俺を呼ぶその声に再び視線を御手洗に戻す。
「守るとか義務とか何か話が大きくなってるけど、誰かに守ってもらわないと立っていられないほど藤岡って弱いの?」
弱い?
あの立夏が?
「僕にはそんな風に見えないけど」