歪んだ月が愛しくて1
「リカは煙草吸わないよね?」
「……何、突然」
未空はソファーの肘掛に体重を乗せて俺の顔を下から覗き込む。
「だって恋人には吸って欲しくないもん!」
「へー」
「おいおい、いつからりっちゃんがお猿の恋人になったんだぁ?」
「寝言は寝て言え」
「ちゃんと起きてるよ!」
「未空、次からは恋人に言ってあげなよ」
「もうリカまで!俺は未来の恋人に言ってるんですぅ!」
未空は不満そうに口元を窄めてクッションに顔を埋めながらブツブツと何やら呟いていた。
そんな未空の頭を撫でながらご機嫌を取っていると会長がとんでもないことを口走った。
「てか、お前吸ってんだろう」
サラッと。
恰も初めから知っていたかのような会長の口調に驚きを隠せない。
「何で…」
「ヤニ臭ぇ」
咄嗟に口元を押さえた。
すると会長は「そっちじゃねぇ」と言って溜息を吐いた。
そっちじゃないってどっちだよ。
「え、ちょっと待って。リカ…、吸ってんの…?」
「うん」
「何でっ!?」
ガシッと、未空は血相を変えて俺の肩を両手で掴む。
「……それ、理由聞いてる?」
今更理由を聞かれても返答に困る。
アイツが吸ってるのが気に入らなくて吸った、なんて動機がガキ過ぎて恥ずかしい。
でも未空は「何でリカが、何で…」とリピートするだけでそれ以上何も聞いて来なかったから無視することにした。
「いつから吸ってるんですか?」
「中1…?」
「俺より早いじゃん。りっちゃんってば不良さんねぇ」
「違いますよ。それに俺は会長や陽嗣先輩と違って毎日吸ってるわけじゃありませんから」
「ならどんな時に吸ってるわけ?」
「……イライラしてる時とか」
「イライラねぇ…。ここにいると手に入れんのも大変っしょ。俺が代わりに調達してあげようか?」
「え、ほんと…「天誅っ!」
あ、復活した。