歪んだ月が愛しくて1
未空は突然復活したかと思えば何故か陽嗣先輩の頭に手刀を落とした。
と思いきや会長までもが執務机の上に置いてあったペーパーウェイトを陽嗣先輩目掛けて投げ付けていた。
そんな2人の様子を九澄先輩はカップに口を付けたままほくそ笑んでいた。
ああ、何て平和な光景………じゃなくてっ。
「何リカに煙草勧めてんだよ!ふざけんな!俺の未来の恋人を肺ガンにさせるつもりか!?」
「誰が誰の恋人だぁ!?寝言は寝て言えバカ猿!てか尊も猿に加勢してんじゃねぇよ!軽く殺人未遂だからなこれは!」
「自業自得だ」
「死罪かよ!」
確かにペーパーウェイトは危ない。
良い子は絶対真似しないように。
……ん?作文?
「リカももう煙草吸っちゃダメだからね!」
「何で?」
「な、何でって…、身体に良くないからだよ!肺ガンになっちゃうよ!」
「なったらなった時に…「ダメ!」
何がだよ。
人の話聞く気ねぇだろう。
「おい」
その声に顔を向けると会長は掌を上にして俺に向かって手を伸ばした。
「……何?」
「出せ」
……やっぱりか。
「リカ没収!煙草出して!」
「………」
「おい」
「………」
「立夏」
「………嫌だ」
「あ?」
「別にいいじゃん、誰にも迷惑掛けてないんだし」
フイッと、会長から視線を逸らす。
自分だって吸ってるくせに何で俺だけ禁煙しなきゃいけないんだよ。
「俺が早死にしたって皆には関係…「なくないよ!」
遮りやがったなコイツ…。
「リカが死んだら俺悲しいもん!俺も後追っちゃうからね!リカの部屋の中で首吊って死後の世界でい…「嘘です。ごめんなさい」
ぐすんっと嘘泣きまでしやがって一々大袈裟なんだよ。
本当自分の長所を最大限生かしてるよな。
「でも没収は嫌だ」
俺にとってBLACK DEVILはただの趣向品じゃない。
―――シロ
お守りみたいなもの。
「今持ってるのでやめるから没収は勘弁して」
目に見える繋がりはもうそれしかないのだから…。
「お願い」
「………」
忘れたいのに、思い出したくないのに、本当は誰よりもアイツの存在を近くに感じていたいんだ。