歪んだ月が愛しくて1
「Marvelous!」
………は?
勢い良く寮長の両手が伸びて来たと思えば突然俺の肩をがっちりと掴んで上半身を激しく揺さぶられた。
「そうかいそうかい、君があのっ!」
あの?
「ああ、何たる幸福!何たる幸運!ついに…っ、ついに神が僕の願いを聞き入れてくれたと言うのか!これを奇跡と呼ばずして何と呼ぼうか!誰か僕に教えてくれたまえ!さあ頼稀!」
「俺に振らないで下さいよ」
うわっ、テンション高ぇ。
俺、ダメな人種かも。
「ねーね、さっきから何言ってるか分からないけど、アゲハってリカのこと知ってるの?」
「Non!知っているも何も彼はあの…」
「アゲハさんは待ってたんだよ、立夏がカードキーを取りに来るのを。そうですよねアゲハさん?」
「何を言っているんだい頼稀!彼だよ、忘れてしまったのかい!彼こそがっ」
「何を言ってるんだはこっちの台詞ですよアゲハさんこそ俺の話聞いてるんですか俺はそうですよねって同意を求めてるんですけどとっとと答えてくれませんか人の話聞いてるんですか?ああ、やっぱりアゲハさんの勘違いでしたかそりゃそうですよね立夏とは初対面なんですから新手のナンパはやめて下さいよ下手クソですか」
有無を言わさぬ勢いで捲くし立てる頼稀はその手で寮長の口を塞ぎその以上の言葉を発することを許さなかった。
「てなわけだ。納得したか?」
「ふーん…」
頼稀の返答に納得いかない様子の未空が目を細める。
「ゴボッ、見苦しいところを見せてしまって申し訳ない。改めまして、僕の名前は九條院暁羽。3年C組の学級委員長と寮長を兼任しているんだ。一応僕の方が年上だが君には是非ともアゲハと気軽に呼んで欲しい、愛らしい駒鳥よ」
「はぁ…」
テンション高過ぎて話についていけない。その上気障だし。
こう言う人種ってどうやって相手にすれば良いんだっけ。
んー………よし。無視しよう。そうしよう。
と思った矢先、寮長が右手を差し出したかと思えば床に片膝を付き俺の手を取って手の甲に唇を落とした。
「なっ!?」
突然の奇行にギョッとする。
「敬愛なる駒鳥に僕等の再開を祝して」
なっ、ななな…。
「何さらすんじゃボケェエエエエ!!!」
「がはっ!!」