歪んだ月が愛しくて1
「で、俺に言い忘れてたことって何?」
「実はね、覇王親衛隊を非公認から正式な親衛隊にすることになったんだ!」
「親衛隊を?」
何でまた?
「理由はこれ以上アイツ等に好き勝手させないため!」
意味が分からない。
「どう言う意味ですか?」
未空の説明だけでは理解出来ず九澄先輩に視線を移して説明を求めた。
「親衛隊の公認と非公認の違いは分かりますか?」
「はい。前に頼稀から聞きました。覇王親衛隊はずっと非公認だったんですよね?」
「ええ。だから彼等は今まで好き勝手にやって来たんです。勿論彼等だけを責めるつもりはありません。それを黙認して来た僕達にも責任はありますから」
「それなのに何で今更…」
「僕達は規則を作りたかったんです。それに伴い義務も生じますが」
「面倒じゃないんですか?」
「それでもこれ以上僕達のせいで誰かが傷付くのは見たくありませんから」
「え…」
その言葉に思い当たる節があった。
「俺は誰かとかどうでもいいけどリカのことだけは傷付けたくないからさ」
「未空…」
何で…、
「それにりっちゃんに何かあるとうちの王様が黙ってねぇからな」
「おい、適当なこと言ってんじゃねぇぞ」
「ぷぷっ、図星♡」
「三途の川まで送ってやろうか?」
4人のやり取りで分かった。
覇王親衛隊を公認にしたのはきっと俺のせいだ。
俺が幹部連中に絡まれているから。その上会長に怪我までさせたから…。
結局俺は1人じゃ何一つまともに出来なくていつも誰かに迷惑を掛けてばかりいる。
そんな俺に「頼れ」なんて頼稀も未空もどうかしてるよ。
―――足手纏い?
ああ、ダメだ。
拒絶されることがこんなにも怖いなんて。
あの時、嫌ってほど思い知ったじゃないか。
『―――化け物のくせに!』
もうあんな想いはしたくないのに…。
『…ごめん、シロ……』
もう何も…、何も失いたくない。
失うくらいなら何もいらない。何も望まない。
「立夏」
「、」
不意に会長に名前を呼ばれて現実へと引き戻される。
「お前が下を向く必要はない」
その言葉に顔を上げると俺を見つめる会長と目が合った。
「胸を張れ。お前は何一つ恥じることはしていない。少なくとも俺の知ってるお前はな」
「………」
俺の何を知っていると言うのか。
少なくとも聖学に来てからの俺は他人に迷惑を掛けてばかりでそんな自分が嫌で嫌で仕方ないのに。
それなのに反論出来なかった。したくなかった。
否定されてばかりの“藤岡立夏”と言う存在を会長は何の迷いもなく肯定してくれた。
それはまるで過去の俺を焚き付けるかのように会長の声は静かに俺の中に浸透していく。