歪んだ月が愛しくて1
「白樺は陽嗣先輩のセフレなんですか?」
延々と続く未空と陽嗣先輩の戯れ。
それに終止符を打つかのように俺の言葉が遮った。
「りっちゃんまで…。ああ、そうだよ。でもそれは昔のことで今はそんなんじゃねぇから」
陽嗣先輩は半ば逆ギレ状態だった。
ドカッとソファーに深く座り込み制服の内ポケットから煙草を取り出して口に銜える。
「それなら白樺が俺を殴ろうとした理由も分かるんじゃないんですか?」
ピタッと、その言葉に陽嗣先輩の動きが止まった。
陽嗣先輩だけじゃない。他の3人も俺の発言に目を瞠る。
「白樺は陽嗣先輩のことが好きなんです。だから陽嗣先輩が俺に構ってるのを見て堪えられなかったんだと思います」
「……何それ。好きだったら何してもいいわけ?」
そう言って鼻で笑う、陽嗣先輩。
俺の発言が気に食わなかったのか、それとも試しているのか挑発するような乾いた笑みを漏らした。
「そうは言ってません。ただ…「待った」
途端、陽嗣先輩は俺の言葉を遮った。
「それ以上踏み込むつもりなら、覚悟してね」
この場の空気にあまりに不釣合いな陽嗣先輩の声。
牽制するような、導くような、どちらとも取れる声色でそう言った。
「………」
肌を突き刺す冷たさ。
周りには俺達以外の3人もすぐそこにいるのにまるで2人だけの空間に閉じ込められたかのように息苦しかった。
「どうする?」
ニヒルに笑う、彼。
本当は最初から気付いていた。
彼の瞳が笑っていないことを。
彼こそが火種の根源だと言うことに。