歪んだ月が愛しくて1
陽嗣先輩は音も感情も何もない表情で俺を見つめる。
ただじっと俺の言葉を待っているかのように。
「……どうもこうもない」
これ以上踏み込むなら覚悟しろって?
それはこっちの台詞だ。
「踏み込むよ」
「、」
覚悟なんて大それたもんはまだ出来ていない。
踏み込んだ先に何があるのかも分からない。
でも俺は陽嗣先輩に言わなきゃいけない。
気付いて欲しい。知っていてもらいたい。
白樺の気持ちをなかったことにしないで欲しいから。
「好きだからって何をしてもいいとは思いません。でも誰かを想い続けることはそう簡単なことじゃない」
「………」
俺はそれを知っている。
「やり方はどうであれその想いを貫ける白樺が凄いと思ったし、俺は…」
『同情なんていらないんだよ!』
……違う。
これは同情なんかじゃない。
「羨ましかったよ…」
「、」
覇王4人の視線が突き刺さる。
様々な想いが飛び交う中、俺は陽嗣先輩から視線を逸らさなかった。
「多少強引でもそれだけ陽嗣先輩のことを想ってるんです。やり方は間違ってたけど…。でも俺は白樺がやったことを責めることは出来ない」
『お前なんかに陽嗣様は渡さない!』
……俺には言えない。
伝える資格すらない。
だってあの人への想いは決して許されないものだから。
だから白樺のことが心底羨ましかった。
俺が伝えられない想いを素直に言葉にして伝えることが出来る白樺のことが。
「白樺の気持ちに応えて欲しいわけじゃないんです。ただ忘れないで欲しいんです。陽嗣先輩のことをちゃんと好きな人がいるってことを。陽嗣先輩にとってはセフレの1人かもしれないけど白樺にとっては違うんです。形振り構ってられないほど大切な人なんですよ」
「………」
「……持論、ですけど」
余計なことを言った自覚はある。
でも陽嗣先輩の冷めた瞳を見たら黙ってることが出来なかった。
白樺のことを考えると余計に…。
きっとこう言うところが白樺の逆鱗に触れたんだろうな。
嫌われるのもある意味才能なのかもしれない。
さて、踏み込んだ先に待っているのは何だろうか。