歪んだ月が愛しくて1
「タ、タンマ!何で会長も未空もそんな怒ってんだよ!?」
「あ?怒ってねぇって言ってんだろう」
「怒ってないけどリカのファーストキスを奪った奴は許せない」
だから何で顔がマジなんだよ!
「で、誰だ?」
「白状するまで逃がさないから」
「誰って…」
面倒臭いのに捕まってしまった。
これも全て中途半端に引っ掻き回した陽嗣先輩のせいだ。
「……陽嗣先輩」
キリッと、元凶の人物を睨み付ける。
「そんな顔すんなって。鳴かしたくなるじゃん」
「泣きませんけど?」
「意味が違うよ」と言ってゲラゲラと笑う陽嗣先輩が憎らしい。クソが。
「おい、無視してんじゃねぇよ」
「リカ!ちゃんと答えてよ!」
「答えてって言われても…」
「何で俺が初めてじゃないの!俺だってリカにキスしたじゃん!」
「なっ!?」
「あ゛?」
「マジかよ!猿のくせにやるじゃねぇか!」
「猿じゃねぇよ!」
「ちょ、ちょっと待って!未空、まさか、あの時のこと覚えてたの…?」
「当たり前じゃん!俺がリカとの思い出を忘れるわけないよ!」
「いやいや、当たり前じゃないから!」
寧ろ忘れてくれた方が良かったけどね。
「あの後何も言わなかったくせに…」
「態とだよ。それになかったことにしたかったのはリカの方でしょう?」
分かってるなら今ここでぶっ込んで来るなよな。性悪か?
「どうやら先を越されてしまったみたいですね」
「………」
会長と九澄先輩が無言で見つめ合う。
どこか楽しそうで嬉々とした表情の九澄先輩とは違い会長は殺人鬼並みの鋭い眼光で九澄先輩を睨み付けていた。
「……冗談じゃねぇ」