歪んだ月が愛しくて1
「でしたら質問を変えましょう。立夏くんのファーストキスの相手は初恋の人ですか?」
「……違いますけど」
てか質問を変えるくらいなら話題を変えてくれよ。
「では立夏くんの初恋はいつですか?」
「いつって…、そんなのもう覚えてませんよ」
「わお、おませだね」
「そうじゃなくて!本当に覚えてないんですよ。いつからとかじゃなくて気付いたら好きになってたんですから」
グシャと、右隣で何かが潰れる音がした。
その正体を突き止めるべく音のした方に目をやると。
「会長、煙草が…」
「………」
そこには額に青筋を立てながら煙草の箱を握り潰す会長がいた。
……何故?
「あっちゃー」
「どうやら火を点けてしまったみたいですね」
「まあ、気持ちは分かるけどね…」
こっちは全然分かりませんが。
「お、猿のくせに一丁前に拗ねてんのか?」
「拗ねてねぇよ!」
「はいはい、そう言うことにしといてやるよ。でもあの王様をここまでさせちゃうとはな」
「流石は立夏くんですね」
何が流石だよ。
ただの珍しいもの見たさのくせに。
「……初恋なんて、そんないいもんじゃないよ」
俺の初恋はもう終わった。
今となってはあれが恋と呼べるものだったかも分からないが、あの人に対する気持ちは家族以上のものだった。それだけは断言出来る。
「………あっ!」
突然、未空は大きな声を上げた。
俺の顔を見て数回瞬きを繰り返すと。
「手紙のこと忘れてた…」
げっ。
未空のせいでこっちまで思い出してしまった。
桂木先輩に呼び出されたせいですっかり忘れてたのに何で今になって思い出すんだよ。
「手紙?」
「何の話ですか?」
「リカがラブレター貰ったんだよ!」
「あ?」
「ラブレター?」
「へー、りっちゃんもやるじゃねぇの」
「ち、違いますよ!あれはラブレターとかじゃなくて!」
「はい、鞄没収」
「ああぁあああ!ダメダメ!未空返して!」
「だったら手紙の中身は何?いい加減白状してよ」
「だからあれは…っ」
未空から鞄を取り返してそのまま抱え込む。
無意識に鞄の中に手を入れると捨て忘れた手紙に手が触れた。