歪んだ月が愛しくて1



「どう言うことだ?」

「………」



そんなのこっちが聞きたいくらいだ。
まさかこんなものまで仕込まれていたとは…、油断した。
今になってとっとと処分しておけば良かったと後悔している。



「お待たせしました」



会長は九澄先輩から救急箱を受け取ると怪我をしていない方の腕と口だけで器用に傷の処置に取り掛かる。
会長が纏う雰囲気に飲まれて口を出せなかった俺とは違い見兼ねた九澄先輩が手当てを代わろうと申し出たが、会長は「俺がやる」と言って俺の目の前に居座った。
それから会長は無言で処置に入り傷口を消毒して上から大きめの絆創膏を貼ってくれた。
更にその上から包帯まで巻こうとするから流石に大袈裟だと口を挟もうと思ったが案外そうでもないらしい。
処置の時に見えた俺の右手の人差し指はぱっくりと切れて血が滴っていた。
自分の鞄に何の警戒もなく手を入れたから結構深く切れてしまったようだ。



「チッ」



すぐに包帯に血が滲んだ。
それを見て険しい顔をした会長が俺の鞄を覗いて中からあるものを取り出した。
あるものとは毎日のように送られて来る黒い手紙。未開封の手紙の中からは鋭い刃が覗いていた。



「こ、れ…」



未空が小さな声で呟く。



「カッターの刃か」



何で手紙を突き破って刃が出たのかは分からない。

でも指先に走る痛みは本物だった。



「立夏」

「はい」

「もう一度聞く。これはどう言うことだ?」



会長はローテーブルの上に並べた数枚の手紙を指差してそう言った。



「正直に話せ」

「………」



さて、何て答えようかな。


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