歪んだ月が愛しくて1
「……ラブレター?」
「あ?」
「嘘です。ごめんなさい」
ちょっとボケただけなのにそんな睨まなくてもいいじゃん。空気読めよな。
「もしかして、クラスで言ってた手紙って全部…」
「うん。これのことだよ」
「中は?」
「さあ、読んでないので分かりません。気になるなら読んでみれば?」
会長は封筒の中身を慎重に取り出し、他の3人もそれぞれ封筒から手紙を取り出して内容を確認する。
皆が険しい顔をして手紙を読む中、俺は自分の指を見て苦笑した。
不覚だった。まさか刃物まで持ち出すとは思わなかった。
それほどまでに会長達が好きなのか。……いや、顔が好きの間違いか。
そんな嫌味がスラスラ出て来るほど自分でもイライラしているのが分かる。
こんなことになるなら事前に差出人くらい調べておけば良かった。
「……いつから、なの?」
未空は神妙な面立ちで言葉を発する。
「多分新歓の後からかな」
「多分?」
「特に気にしてなかったから覚えてない。こんな幼稚なもんに一々付き合う必要もないし何より時間の無駄じゃん」
「………」
そもそも手紙のことを話すつもりなんてなかったんだ。
こんなことにならなければ触れられることもなかったのに本当失敗したな。
「差出人の名前が書いてありませんね」
「きっとアイツ等の仕業だよ!親衛隊の連中がリカに嫉妬してやったに決まってる!」
「その可能性は高いと思いますが…」
「絶対そうだよ!折角公認の親衛隊にしてやったのに…っ、アイツ等絶対許さねぇ!」
「大袈裟だよ。それにまだ親衛隊の仕業かどうか分かんないじゃん。俺は大丈夫だから少し落ち着いて」
「落ち着け!?落ち着けるわけないじゃん!絶対親衛隊の仕業に決まってるよ!逆に何でリカはそんなに落ち着いていられるのさ!リカは怪我してんだよ!?血出てんだよ!?それなのに何ともないみたいな顔して痛くないの!?」
「痛くないよ」
「嘘だっ!!」
未空は叫ぶように断言する。
本人が痛くないって言ってんだから大人しく騙されてくれよ。
それに痛みがないのは本当だ。
もう何も感じない。
そう言う風に上手いこと出来てんだよね、俺の身体って。
「立夏くん」
九澄先輩が俺の名前を呼ぶ。
「やはり…、僕には彼等を信じることは出来そうにありません」
「九澄先輩…」
九澄先輩の瞳に影が落ちる。
ああ、そんな顔させたくなかったのに…。
やっぱり俺には彼等を理解することが出来ない。
だってどうして俺が傷を負っただけでそんな顔をするのか全然分からないんだもん。