歪んだ月が愛しくて1
『…ごめん、シロ……』
あの日の光景が脳裏に過る。
公平のことを思い出すといつもそうだ。
忘れちゃいけない。忘れられない。忘れたい。忘れたくない。
そんな矛盾が俺の中で渦巻いている。
……いや、本当は矛盾じゃない。どれも正解なんだ。
忘れたくても忘れられない。
忘れたいのに本当は誰よりも忘れたくない大切な存在。それが彼等だった。
「まだ、引き摺ってるのか…?」
引き摺る?
「……変な言い方すんなよ」
違う。
引き摺ってんじゃない。
「あれは俺の罪だ」
俺のせいで公平が傷付いた。
罰を受けるのは当然の報いだ。
「何でお前は自分を追い込むことしか出来ねぇんだよ…」
そう言って苦悶の表情を浮かべる、頼稀。
「あの事件はお前のせいじゃない。高屋を傷付けたのは“鬼”だ」
「……それでも、俺の存在が公平を危険な目に合わせたことに変わりはない」
「お前が自分を責めるのはお門違いだ。いいか、あの事件で確かに高屋は重傷を負った。でもお前だって被害者だ」
「被害者?」
「目に見える怪我はなくてもあの事件のせいでお前の心はズタズタだ」
……は?
「何、言ってんの…」
「誤魔化すな。俺には見えるんだよ」
「………」
頼稀には俺の何が見えるんだろうか。
俺は被害者なんかじゃない。公平を傷付けた加害者側の人間だ。
「それなのに何で…。お前は何度傷付いても立ち上がって大切なものを失ってはまた傷付く。何回繰り返せば気が済む?俺は…俺達はもうこれ以上お前の傷付く姿は見たくねぇんだよっ」
「………」
頼稀の言っていることは間違ってる。
そう言い返したいのに言葉が見つからない。
「やっぱりあそこにいるべきじゃなかったんだ…」
小さな声が呟く。
頼稀の顔付きが険しさを増す。
「生徒会を抜けないか?」