歪んだ月が愛しくて1
頼稀の言葉に耳を疑った。
でも改めて聞き返そうとは思わなかった。
「あそこはダメだ」
ダメ?
何が?
「今更、何言ってんだよ…」
「俺は反対したはずだ」
「でもっ」
頼稀は止めなかった。
いつも俺の意志を尊重してくれていた。
それなのに…、
「あそこはお前の居場所じゃない」
「、」
それなのに今は頼稀の言葉が冷たく突き刺さる。
『お前の居場所はそこじゃない』
……ああ、何でこんな時にアイツの言葉を思い出すんだよ。
「このまま生徒会に居続ければきっとお前はまた傷付くことになる」
自分が傷付くことは怖くない。
俺が怖いのは大切なものを傷付けられることだけ。
「もう止めよう。お前は生徒会の連中といるべきじゃない。居場所が欲しいなら俺がやる。俺と…、俺達と一緒に来い」
偽りのない真剣な眼差し。
頼稀は俺から視線を逸らすことなくただじっと俺の言葉を待っていた。
でも俺はその言葉に応えることが出来るのだろうか。
頼稀の言い分だと俺が生徒会を辞めさえすれば傷付かずに済むと言うことだが、そもそも何で生徒会にいると傷付くことになるんだろう。だってあそこには何もない。大切なものは既に手放した。だから俺には何もないはずなのにどうしてそれを言葉に出来ないんだろう。
「俺は…」
トントントン。
その音にドアの方を見つめるとそこから顔を出したのは担任の紀田先生だった。
「お、こんなところにいたのか。捜したぞ」
「先生?」
「……何の用だ?」
少し不機嫌そうな頼稀の声。
頼稀は話の途中で入って来た紀田先生の存在を疎ましく思っているようであえてそれを前面に出していた。
「お前じゃねぇよ。俺が捜してたのは立夏の方だ」
「俺?」
「まあ、良い話じゃねぇけどな」
「……何?」
嫌な予感がする。
俺と紀田先生に関係があるとしたら…、あれしかない。
「アイツが帰って来たぞ」
ああ、やっぱり。