歪んだ月が愛しくて1
室内に足を踏み入れ玄関先で靴を脱ぎ廊下を進んで行くと本来の2人でも広過ぎるほどのリビングに繋がった。
リビングは清楚感漂わせる白色に調整されテレビやソファーなど生活に必要な物は全て揃っていた。
キッチンも最新のシステムキッチンが備わっていて純粋に羨ましいと思った。
うちもそろそろ新しいのにした方が…。
「……違うか」
もうあの家じゃないんだ。
兄ちゃんとカナはもういない。
誰かに料理を作ることも帰りを待ってることもない。
いつからだろう。
あの家が窮屈に感じるようになったのは。
俺の居場所がなくなったのは。
(初めからか…)
笑える。
何を期待してんだが。
リビングのソファーに座って広い部屋を見渡す。
今日からここが俺の部屋。俺の家。
文月さんがどう言うつもりで俺を1人部屋にしたのかは分からないが、他人に気を遣わなくていい利点があるから一応感謝しておこう。
でも、
「贅沢を通り越して無駄だな」
玄関に積み上げていた段ボールを寝室に運び入れる。
寝室は12畳ほどの広さでダブルベッドと勉強机とクローゼットのみの白色を基調としたシンプルな部屋だった。
(ここも白か…)
何でもかんでも白にすればいいってわけじゃないだろうに。
部屋を広く見せたり清潔感を強調したり自分好みにカスタマイズ出来たりと利点はあるかもしれないが、庶民育ちの俺からしたら汚れが目立つから好きになれなかった。
まあ、好きになれない理由はそれだけではないが。
「ここでいいか」
段ボールを部屋の隅に置いて中身を確認するためにガムテープを剥がすと、中に入っていたのは衣類やインスタント食品、それから…。
「手紙?」
きっと兄ちゃんからだ。カナが俺に書くわけないし。
でも何て書いてあるんだろう。
心配性の兄ちゃんのことだからちゃんと食べなさいとかかな。
もしかしたら挨拶なしに家を出て行ったことに怒ってるかもしれない。
もう帰って来るなとか書いてあったらどうしよう。きっと立ち直れない。
そう思ったら自然と手紙を段ボールの中に戻していた。
「……やめよう」
今はまだ見たくない。
俺は段ボールの整理をやめてベッドに大の字で横になる。
ダブルベッドのためどんな体勢で寝ても十分な広さがあった。
柔らかな枕と、手触りの良い真っ白なシーツ。ベッドマッドも程良い固さを保っているため寝心地は良さそうだが、今度シーツ一式買い替えてもいいか哀さんに聞いてみようかな。
「疲れた…」
今日は色々あった。
転入初日に文月さんと会わずに済んだのはラッキーだったがその分慣れないことばかりでどっと疲れた。
特にあのクラスメイトとこれから毎日のように顔を合わせなきゃいけないと思うと考えただけで頭が痛くなる。
これから3年間ここで過ごすことを考えたら無下に出来ないから余計に面倒臭い。
それに未空は、アイツに…。
「あー……クソッ」
だめだ。瞼が重くて何も考えらんねぇ。
ちょっとだけ仮眠しよう…。