歪んだ月が愛しくて1
「そう言えば貴方に頼まれていた件ですが調べて置きましたよ」
「資料は?」
「こちらに」
九澄は執務机の上に分厚い資料を置く。
「……こんなにか?」
「はい。ただ全てが正確なものではありません。風魔一党に関する逸話は数知れませんから」
「………」
風魔一党は戦国時代から続く由緒正しい忍の家系だ。
戦国時代より相模足柄郡を拠点に持つ忍者集団で北条家に100年以上の間仕えていたとされている。
北条家が滅亡すると風魔一党は江戸に拠点を移し徳川家に盗賊の汚名を着せられ処刑されたと言われている。
しかしそれは替え玉で徳川家から逃げ切った風魔一党はその特殊な能力を衰えさせることなくひっそりと身を隠し暮らしていた。
明治維新に入り再び江戸に拠点を構えた風魔一党は裏十三家として裏世界に君臨し次第にその勢力を広げて来たと言われている。
「裏十三家か…」
「僕達とは真逆の存在ですね」
「フン、くだらねぇ」
「そう言うと思いました。でもそれは貴方が神代家に生まれた宿命です。勿論、れは僕にも言えることですが」
「このご時世に表も裏も関係ねぇだろう」
裏十三家とは近現代まで裏世界の頂点に君臨していた十三の家系を指す。
肉体的・精神的に優れた者が産まれ易い遺伝子で超人的能力・技術等の特殊能力を持ち、圧倒的戦闘能力で古来から裏世界を支配して来た。
今ではその半数が断絶或いは廃業しているが、その悪名は今も尚畏怖の象徴として語られ裏世界での影響力を強く残している。
その対照となるのが表御三家だ。
それは表世界に絶大な権力を握り頂点に君臨している三つの家系を指す。
財力・名声・権力によって古来から日本を実質的に支配して来た存在だ。