歪んだ月が愛しくて1
「それともう1人、気になる人物が浮上しました」
「誰だ?」
「先程挙げた中にいたクラスメイトの…」
次の瞬間、放送口から聞き覚えのある声が聞こえて来た。
『あー…』
その声ですぐに奴だと分かった。
でも分かったところで何も変わらない。
面倒臭いのが帰って来た、その程度にしか考えていなかった。
この放送を聞くまでは。
『1年C組の藤岡立夏に告ぐ。今すぐ愛しの理事長様のところ来い。5分以内に来なければ犯す』
………は?
「この声は…」
「チッ」
無意識に舌打ちが漏れる。
「あの野郎…、いつの間に帰って来やがった」
「そんなことよりもやはり今の放送からして立夏くんと理事長は…」
「……それがどうした」
ジュッと、火の点いた煙草を執務机に押し潰す。
「どうするつもりですか?」
「決まってんだろう」
誰が誰を犯すだと?
ふざけやがって。
「させるかよ」
それだけ言い残して俺は生徒会室を飛び出した。
後で九澄に鼻で笑われるだろうが今はそんなこと気にしていられるか。
中央棟の廊下を走りながら頭に過るのは立夏のことだけだった。
「本当素直じゃない人ですね…」