歪んだ月が愛しくて1
「でも、独り占めは関心しませんね」
「だな」
中央棟に寄り付く一般生徒はいない。
選ばれた者だけが立ち入ることが出来る覇王の根城だと誰もが認識し、その崇高な場所を汚してはいけないと一部のものが布教していた。またある者は悪の巣窟だと揶揄し彼等の存在を煙たがっていた。
そんな彼等の縄張りは中央棟に留まらずこの学園全体を金と権力で支配していた。
「ヨージにはあげないよ」
「俺じゃなくて王様」
「尊?」
「転入生に目を付けてるのは未空だけではないと言うことですよ」
「え、嘘………尊も?何で?」
朱髪の男と灰髪の男は顔を見合わせて肩を竦める。
「嫌なんじゃないですか、自分の庭を余所者に荒らされるのは」
「同感」
覇王は自分達の縄張りを土足で踏み荒らすことを許さない。
例えそれが誰であっても。どんな理由があろうとも。
例外は認めない。
「そりゃ俺だって…」
不安要素は根こそぎ取り除かなくては意味がない。
それこそが覇王の責務であり存在意義だと自負している。
「でも言ったじゃん、今回は当たり!」
「本当かよ」
「俄かに信じ難いですね」
「本当だって。2人も会ってみれば分かるよ」
転入生について語る未空は終始笑顔を崩さない。
2人はそれが不思議で仕方なかった。
「俺が気に入った理由」
2人は半信半疑だった。
仲間の言葉を疑うわけではないが、自分の目で見極めないことには判断の仕様がない。
しかし逆にそれが2人の好奇心を煽ることになる。
未だ見ぬ異例の転入生に心が躍る。
まるで新しい玩具を見つけた子供のように。
「そこまで言われたら仕方ありませんね」
「外れだったら承知しねぇぞ」
無邪気に。
「大丈夫」
そして残酷に。
「絶対に退屈させないよ、リカは」