歪んだ月が愛しくて1
「リツ…」
「何?」
「……いや、何でもない。生徒会に飽きたらいつでも戻って来ていいぞ」
「俺はアンタのペットじゃねぇよ。てか辞める気ねぇし」
「連れねぇな。それが初めての男に言う台詞か?」
その言葉に会長と未空の肩がピクッと跳ねた。
「初めて?」
何の話だ?
「もう忘れちまったのか?ガキだったお前に大人の階段を登らせてやったのは俺様だろうが」
「なっ!?」
「あ?」
「は?」
文月さんの爆弾発言に声を荒げた。
何やら含みのあるような言い方だが、文月さんの言いたいことはすぐに分かった。
「な、何適当なこと言ってんだよ!あれはアンタが勝手に…っ」
「何だ、覚えてるじゃねぇか。忘れてるんだったらまた思い出させてやろうと思ったのによ」
文月さんは俺に急接近して強引に肩を抱く。
更に左手で俺の顎に触れてクイッと傾ける。
「いらねぇよ!全力でお断りだわ!」
「遠慮すんなよ」
「してね…っ」
文月さんの手を振り払おうとした時、不意に後ろから腕を引っ張られた。
「触るな」
振り返らなくても分かる。
腕を引っ張られたせいで会長の胸に俺が寄り掛かる体勢になっているため会長の低音がダイレクトに耳に直撃する。
そんな会長の言動に驚いたのは俺だけではなかった。文月さんは一瞬目を丸くさせたかと思えば次第に口元を歪ませて悪い顔を見せた。
「おいおい、何様のつもりだ?いつからリツはお前のもんになったんだよ?」
「今んとこは誰のものでもねぇよ。ただテメーがコイツの近くにいんのが気に入らねぇだけだ」
「今んところだ?ハッ、リツの初めてを他の野郎に奪われたのがそんなに気に食わなかったか?」
「くだらねぇ。寝言は寝て言え」
「くくっ、図星か?」
会長の鋭い眼光がギラリと光る。
裏腹に文月さんは余裕な笑みを崩さない。