歪んだ月が愛しくて1
結果的にリツを生かすことには成功した。信頼と絆を代償にして。
そして今、リツは“生”を選択してここにいる。俺じゃない覇王の隣に。
しかもリツはよりによって神代に手を伸ばした。
俺と同じようにリツに心を奪われているであろうこの男に。
他者に心の内を暴かれるのが死ぬほど嫌いなくせに、神代にならひび割れだらけの心を曝け出してもいいと言うのか。
「……調子に乗るなよ」
本当、こんなはずじゃなかったんだ。
他者との関わりを極端に避けていたリツがホイホイ生徒会に入ったことも、猫のように気まぐれなリツが何かに執着していることも、一度は失ったはずのソレにまた手を伸ばしたことも…。
「リツが生徒会に残ることを選んだからってお前達に心許したわけじゃない。中途半端な気持ちでリツに近付くな。安易に首突っ込むようなら怪我だけじゃ済まねぇぞ」
「脅しか?」
「脅しじゃねぇよ。現に死にかけた奴がいたからな」
「………」
その言葉に神代は眉間に皺を寄せた。
大方俺の言葉なんか信じてないんだろうが、嘘は吐いていない。
これは忠告だ。
でもそれは神代のためじゃない。
「俺様はリツ以外の人間が不幸になろうが傷付こうが構わない。リツさえ無事でいてくれたら…。昔のように笑ってくれればそれでいい。そのためなら俺様は何だってする。何百、何千人だって犠牲に出来る。俺にはその覚悟がある」
リツのためなら俺は何だって出来る。
いや、出来る出来ないの問題じゃない。
リツが望むなら、リツのためなら、俺は何でもやってみせる。
例えそれで大きな犠牲を払ったとしても後悔なんてしない。
「お前には、その覚悟があるのか?」
「………」
教えてやる。
リツが抱えている闇を背負うにはお前じゃ役不足だってことをな。