歪んだ月が愛しくて1
「お前達、そんなくだらねぇ話で盛り上がってて随分と余裕だな」
その声にハッと我に返る。
絶妙なタイミングに感心する暇もなく頼稀は話を続けた。
「まさか来週何があるか忘れたわけじゃねぇよな?」
「来週?」
「来週と言えば…」
「………あ、定期テスト!」
「「「テ、テストおぉおおお!?」」」
「え、皆忘れてたの?」
「立夏は初めてだから分かるけど、未空と汐は何回目だよ?」
「お前達!C組の平均点下げたら許さないからな!」
頼稀の衝撃的な発言に呆然とする。
頭の中で「テスト」の単語がぐるぐると渦巻くのは勉強をしたくないと言う拒否反応かもしれない。
「テスト、あるんだ…」
「当たり前だろう、学校なんだから」
ですよね…。
「あれ、もしかして余裕?」
「立夏くんって勉強出来そうだもんね」
「は?」
えっ、嘘。
俺って頭良さそうに見えるの?
これも眼鏡効果って奴か?
「え、リカ勉強得意なの?だったら俺に勉強を教えて!」
「いや、その…」
教えてあげたいのは山々なんだけど…。
「………てか、逆じゃない?」
「逆?」
「君バカでしょう」
「ゔっ」
ギクッと、みっちゃんの言葉に肩が跳ねる。
その通り。何を隠そう俺は勉強が大の苦手だ。
小中と不登校だったせいもあり碌に勉強して来なかったし、聖学の入試もまともに受けずに文月さんの伝で入学したからこれまでまともに勉強したことがなかった。
自業自得と言われてしまえばそれまでだが、今ではこの通りバカのレッテルを張られていた。
「リカバカなの?勉強苦手?」
「やめて。ストレートに言わないで」
地味に心抉られるから。
「見掛け倒しもいいところだね。その冴えない伊達眼鏡外したら?」
「えっ!?」
みっちゃんの言葉に驚きを隠せない。
「……お前、気付いてたのか?」
「当然だよ。寧ろあれでバレてないと思ってたわけ?つくづくバカなんじゃないの?」
「ゔぅ、胸が痛い」
「図星だからでしょう」
「じゃあ皆で勉強会だね。早速今日からやろうよ」
「賛成!俺がリカに勉強教えてあげる!」
「お前は教わる方だろうが」
「未空は赤点常習者だもんな」
「じゃあ未空くんの勉強は僕と希くんで見るよ。立夏くんの勉強は…」
「俺と御手洗で見る」
「頼稀だけズリー!俺もリカに勉強教えたい!」
「却下だ」
「じゃあ俺もっ」
「汐も人のこと言えないだろう。安心して、汐の勉強は俺が見てあげるから」
「げっ!?」
あ、汐もヤバいんだ。
「言って置くけど、ここのテストはそう甘くないからね。ちゃんと勉強しないと赤点取るだけじゃ済まないよ」
「え、済まないって何?どうなるの?」
「聖学は普通の学校と違って出席日数や素行よりもテストの点数で成績が決まるんだよ」
「じゃあサボっても何の影響もないってこと?」
「0ではないけどそれを上回る成績を残せば問題ないってこと」
流石は文月さんが経営する学園だけある。
学生時代の文月さんのことは知らないが、あの人が真面目に授業を受けるタマには見えないからな。