歪んだ月が愛しくて1
「……頼稀に言われて、考えた」
『もう止めよう。お前は生徒会の連中といるべきじゃない。居場所が欲しいなら俺がやる。俺と…俺達と一緒に来い』
そう言われて純粋に嬉しかった。
でも何だか釈然としない。
嬉しいはずなのに差し出された手を掴むことが出来なかった。
「頼稀が色々と心配してくれてたのは分かってたよ。多分言いたくないことも言わせちゃったと思う。理由は分からないけど、そこには頼稀なりの考えがあったんでしょう」
「………」
「だから色々考えた。……でも、それよりも自分が何をしたいのか考えてみた」
久しぶりに文月さんと顔を合わせて、色々と衝突して、本音をぶつけて。
でもそれは自分が何をしたいのか分からなくて自分なりに必死に踠いていたからだ。
(……いや、考えないようにしていた)
俺が望むものはたった一つのかけがえのないもの。
ただ俺にはそれを望む資格がなかった。
だって俺には生きている価値すらないんだから。
そう思って、思い込ませて。
勘違いしないように、期待しないように、ずっと自分自身に言い聞かせていた。
「望んじゃいけないって、分かってたのに…」
どんなことをしても過去の罪は消えない。
償っても、償っても、償いきれない罪がある。
本当はこの命を持ってしても償わなきゃいけないのに、俺はその全てから逃げ出した。
『死ぬのは自由だ。いつだって逃げることも出来る。例えお前が死んだところで世界は何も変わらない』
でも会長はそんな俺に言ってくれた。
『だがお前が生きて変わるものもある』
「会長がさ、勘違いじゃないって言ってくれたんだ…」
だから、もう一度だけ願ってしまったんだ。
「俺は、生徒会にいたい」
また失うかもしれない。
それでも…、
「それが俺の答えだよ」
「………」
「もう逃げたくないんだ…」
過去に溺れていた俺に会長は光を見せてくれた。
優しい仕草でも綺麗な言葉でもなかったが、それでもこの手を離さないでいてくれた。受け入れてくれた。
どんな言葉で誤魔化したって結局は俺自身が彼等と一緒にいることを望んでいる時点でもう答えは出ていたんだ。
この選択は決して最善なものではない。最悪、俺が彼等と一緒にいることで彼等を危険な目に合わせてしまうかもしれない。それだけは何としても避けなければならない。
『僕達にとって仲間とは守るべき存在です』
(だったら俺も…)
もう何も奪わせない。
過去の罪を背負って俺は強くなる。
あの太陽に誇れる自分であるために。