歪んだ月が愛しくて1



「はぁ…」



暫くして溜息が聞こえて来た。



……呆れられたかな。
あれだけ忠告してもらったのに聞き分けがない奴だと思われたかもしれない。
それでももう自分の気持ちに嘘は吐けない。気付いてしまったことにもう見て見ぬふりは出来ない。



しかし俺の不安を余所に頼稀の表情はどこか優しげに微笑んでいた。



「……やっと、聞けたな」

「聞けたって?」

「ずっとお前の答えが知りたかった。お前が何を考えてどう思ってその答えに辿り着くのか」

「………」



頼稀はずっと俺のことを考えてくれていた。
俺が“___”と言う理由だけならそこまでしなくてもいいはずなのに。

やっぱり頼稀は何かを隠している。
きっとそれは俺と頼稀に関係していることで、まだ俺には言えないことなんだろう。



「でも選択肢はまだあるはずだ。それでも、本当にいいのか…?」

「うん」



でも今は気付かないふりをしよう。
いつか話してくれることを信じて待ってみるのもいいかもしれない。
そう思えるようになったのも彼等のお陰だな。



「分かった。でも油断するなよ。奴等はまだお前を諦めてねぇからな」

「……うん」

「それともし風紀と接触したら必ず俺に報告しろ。俺の考えが正しければ何れあっちから接触しようと行動を起こすはずだ」

「分かった」

「絶対だぞ。お前はアイツの顔しか知らないが逆を言えば奴もお前の顔を知ってんだ。いくら眼鏡を掛けて髪色を変えたからって気付かれない保証はねぇんだからな」

「分かってるよ。俺だって自分が何をするか分かんない…。でも、もう俺のせいで誰かが傷付くのは見たくないんだ…」

「………」



自分がよく分からない。

暴走したら、アイツが出て来たら、俺はまた…、



「……頼稀に頼みがあるんだ」

「何だ?」

「もし俺がまた暴走したら、その時は…」

「……正直、お前を止められる自信はない」



そうだろうね。俺だってそんな自信ないんだから。
それなのに無関係な頼稀に頼るなんてどうかしているな。



「……でも、もう二度とお前にあの日を繰り返させない、絶対に…。それだけは約束する」



ああ、また頼稀に背負わせてしまった。
これが甘えでなければ一体何なんだろうか。
やっぱり俺は頼稀に甘え過ぎている。このままでいいはずがないのに…。



「……ありがとう」



でも口から出て来る言葉は調子の良いものだった。


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