歪んだ月が愛しくて1
「そう言えば頼稀に言ってなかったけど覇王親衛隊が正式に活動するらしいよ」
「知ってる。神代会長が公認にしたんだろう」
「あ、やっぱり知ってたか」
「当たり前だ。俺を誰だと思ってる?」
「“B2”の諜報部隊隊長様でーす」
「分かれば宜しい」
それから頼稀とくだらない話をして勉強会まで時間を潰した。
カップの中のコーヒーは既に底が見えていてキッチンからお代わりを持って来ようと腰を上げた時、頼稀は周囲を見渡して独り言のように呟いた。
「あれから片付けたんだな、段ボール」
「まあ、流石に1ヶ月以上経つからね」
「差出人は兄さんか?」
「……うん。兄ちゃん過保護だから服とかカップ麺とか色々送ってくれたみたい」
「心配なんだろう、お前のことが」
「そうかな…」
兄ちゃんは過保護で心配性だ。そして俺だけが本当の兄弟じゃないことを人一倍気にしている。今は亡き父さんと母さんの意志を知っているのは兄ちゃんだけだから余計に拍車が掛かっていた。
「それと新歓の肝試しのこと覚えてるか?」
「覚えてるよ」
「祠に置いてあった景品」
「………あっ」
「忘れてんじゃねぇか」
頼稀に指摘されて思い出した。
あの日は月に絡まれたり希を餌にされたり会長に怪我をさせちゃったりと大変な一日だったせいで景品のことなんかすっかり忘れていた。
「で、これが景品の…」
頼稀がズボンのポケットを漁っていた時、突然部屋のチャイムが鳴った。
「……誰だろう?」
「未空じゃないのか。もうすぐ時間だし」
「そうかも。見て来る」
リビングに頼稀を残して玄関に向かう。
再び催促のチャイムが鳴ったことで訪問者を確認することを忘れてドアを開けると。
「はーい、どちらさ、ま…」
そこにいたのは未空ではなく。
「……遅ぇよ」
光り輝く王様がいた。