歪んだ月が愛しくて1
頼稀Side
立夏の安易な提案により再びリビングに戻った俺は何の罰ゲームか知らねぇが神代会長と向き合って座る羽目になってしまった。
提案者の立夏は早々にキッチンへと逃げやがって神代会長から貰った豆でコーヒーを淹れている。ふざけんなボケ。
「それで?」
話を切り出したのは向こうからだった。
話したいことがあると言ったのは俺だが言いたいことがあるのは俺だけじゃないはずだ。
「単刀直入に言います。俺は立夏が生徒会役員でいることに反対です。アンタ達には立夏を任せられない」
「はっきり言ったらどうだ?」
「じゃあはっきり言わせてもらいますけど、中途半端に掻き乱すくらいなら初めから関わるな。今すぐアイツの前から消えて下さい。目障りです」
「………」
室内に充満するコーヒーの香り。
目の前にこの人さえいなければどんなに穏やかな時間だろう。
でも俺は神代会長に言わなければいけない。そして見極めるのが俺の役目だ。もう二度と立夏をあんな目に合わせないためにも。
「どいつもコイツもバカの一つ覚えみたいに同じことしか言わねぇな…」
神代会長が誰のことを指しているのかすぐに分かった。
立夏と理事長が接触したのは知っているし、あの放送を聞いて覇王が黙っているはずがないからな。
「それだけ俺達にとって立夏の存在は大きいんです」
「俺達?」
理事長には理事長の、俺には俺の罪がある。
償い切れないほどの重罪が背中に重く圧し掛かる。
「その複数形には九條院も含まれてるのか?」
アゲハさんの名前に思わず目を瞠る。
何でアゲハさんのことを気にする?
いや、思い当たる節はいくつかあるが、まさか―――、
「何のことですか?」
「恍けるな」
「別に恍けてませんけど。何でそこでアゲハさんが出て来るんだか…」
「お前と九條院が度々立夏と接触しているのは分かってる。今は上手く隠してるつもりかもしれねぇが、お前等の繋がりは何れ分かることだ」
「繋がり?俺とアゲハさんはあくまで主人と護衛の関係です。それ以上でもそれ以外でもありませんよ」
「どうだか」
「アンタにどう思われようと構わないけど下手に詮索しない方がいい。こう見えても俺は“風魔”の人間ですからね」
「脅しか?」
「好きに解釈して下さい。ただこれ以上踏み込むなら闇に飲まれる覚悟はした方がいい」
「説得力があるな。流石は裏十三家風魔一党の次期頭首ってところか?」
「表御三家のトップに君臨する神代財閥の次期後継者様にそう言って頂けるとは光栄ですよ」
まさかアゲハさんのことまで勘付かれてたとは。
どうせ皇先輩の助言だろうが表の2トップに手を組まれると厄介だな。
今は誤魔化すしかない。アゲハさんの許可が出るまでは何としても隠し通さなくては。