歪んだ月が愛しくて1
「それで、いつになったら俺の質問に答えてくれるんですか?」
「聞いてどうする?納得いかねぇ答えだったら強引にでも引き剥がすか?」
「俺はアンタがどうやって立夏の心を動かしたのか知りたいんです」
「思ったことを言ったまでだ」
「その言葉に嘘はなかったと?」
「ああ」
「誓えますか?」
「誓う?神か仏にか?」
そう言って神代会長は皮肉交じりに鼻で笑った。
「……真面目に聞いてんだよ」
「そいつは悪かったな。でも生憎俺は神も仏も信じねぇ質なんでな」
高慢な態度でニヒルに口角を上げる、神代会長。
揺るぎない強い瞳が真っ直ぐに俺を見据えて堂々と言い放つ。
「俺が信じるのは俺だけだ」
(ああ、この瞳に立夏もやられたのか…)
ムカつくし認めたくねぇが、立夏が自分から手を伸ばしたくなる気持ちは分からなくもない。
そのくらいこの男の言葉や瞳には力があった。有無を言わさぬ絶対的な力が。
あの獣達とは違う、何かが…。
「立夏が過去に何を抱えて今を生きているのか俺には分からねぇし、アイツが自分から話すまで詮索するつもりもない。まあ、気にならねぇって言ったら嘘になるがな」
「待つつもりですか?」
「誰にでも言いたくねぇことの一つや二つはあるもんだ」
「……立夏の闇は、そんなもんじゃない」
「知らねぇよ。俺は何も聞いていない」
「アンタ、無責任なこと…っ」
「でも俺の手を掴んだのは立夏自身だ」
「っ、」
「お前等は立夏に構い過ぎだ。誰の目にも触れないように囲って自分自身の殻に閉じ込めて、誰もアイツの背中を押そうともしない」
「あ、たり前だ。だって、立夏は…」
『―――同情?』
……違う。
そんなんじゃない。
だって立夏は、俺の―――。
「お前等にとって立夏は何だ?ガキみてぇに守ってやらねぇとダメな奴なのか?」
守る?
そんなの当たり前だ。
それが俺の役目で風魔家に生まれた俺の宿命だ。
「だとしたら立夏を弱くしたのはお前等だな」
「は、」
俺が、立夏を弱くした?
「守るだけじゃ何も変わらねぇんだよ」