歪んだ月が愛しくて1
「そこ、煩くて仮眠取れねぇじゃねぇか」
そこへ先程までアイマスクを付けて居眠りしていたはずの紀田先生が仲裁に入る。
寝起きのせいか若干機嫌が悪そうだ。
「仙堂、いくらお前でも無理強いは良くねぇな」
「無理強いじゃないよ。お願いしてるだけ」
「それがしつこきゃ無理強いって言うんだよ」
紀田先生は何故か俺の真ん前に立って未空と向き合う。
この狭い所にどうして割り込むように入って来たのか分からない。
「き、紀田ちゃんがまともなこと言ってる…」
そこ?
「俺も教師の端くれだ。可愛い生徒が嫌がってるのを見て見ぬふりは出来ねぇからな」
「嫌がってる?リカが?」
「どう見てもそうだろうが」
「………」
未空は身体をずらして紀田先生の後ろにいる俺を見つめる。
「……嫌?」
ぶりっ子か。
自分の顔を最大限に利用しやがって。
「でも俺はリカと一緒がいいよ」
この確信犯め。
「お前のことはどうでもいい。兎に角立夏はダメだ。風魔の言う通り他を当たれ」
「他の人じゃダメなの!リカじゃなきゃ嫌だ!」
「何でだよ。お前等に尻尾振って付いて来る奴は五万といるだろうが」
「………」
その言葉に未空の眼光が鋭く尖る。
あ、そんな顔も出来るんだ。何か意外…。
「分かったら大人しく席に着け。そろそろ締めるぞ」
そう言って紀田先生は俺から離れて教壇に戻って行く。
「……いらない」
「あ?」
でも未空の声が紀田先生の足を止めさせた。
「だから、俺はそんなのいらないって言ってんの」
「………」
一切おふざけなしの真剣な顔で紀田先生を真っ直ぐに射抜く、未空。
それに比べて紀田先生の表情はちょっと意外だった。