歪んだ月が愛しくて1
シン…と静まり返る教室内。
そんな居心地の悪い静寂を打ち破ったのは意外な人物だった。
「立夏くんはどうしたいの?」
葵の言葉に未空と紀田先生を含むクラスメイト達の視線が一斉に集まる。
「どうって…」
この空気の中話せって?
無茶言いなさんな。
「リカ」
「立夏」
ああ、悪目立ちって正にこれじゃん。
文月さん関連じゃないのにどうしてこうなったんだろう。
「……そもそも未空が何やってるか知らない」
「……あっ!」
「え、立夏くん知らなかったの!?」
「ある意味有名人なのにな」
「お前、言ってなかったのか?」
「てへぺろ♡」
てへぺろじゃねぇよ。
軽く殺意沸くからやめろ。
「ねぇ、リカお願い?」
未空は猫撫で声を出して下から俺の顔を覗き込む。
「俺、出来るだけリカと一緒にいたいんだ」
「別に俺は…」
「クラスだけなんて足りないよ。出来ることなら朝起きて夜寝るまでずっと一緒にいたいと思ってるのに我慢してるんだよ」
「いや、だから俺は独りの方が…」
「ね?リカだって俺とずっと一緒にいたいでしょう?」
コイツ、人の話聞く気ねぇだろう。
「お願い!」
「………」
「お願いお願いお願いお願いおねがーい!!!」
「………」
「リカぁ〜、一生のお願いだからぁ…」
「………はぁ、分かったよ」
その言葉に未空はパッと花が咲いたような笑顔を見せた。
反対に紀田先生と頼稀の表情が途端に強張った。
「ありがとリカ!これで放課後もずっと一緒だね!」
「はいはい」
相当嬉しいのか未空は俺の腕に抱き付いて離れようとしない。
こんなに喜んでくれるなら委員会くらい別にいいか。
そう自分に言い聞かせて少しの面倒事なら目を瞑ってやろうと思った。
「で、何の委員会なの?」
あの言葉を聞くまでは。