歪んだ月が愛しくて1



「未空、今何て…」

「だから生徒会だってば!」



セ イ ト カ イ



「あ、無理だ」

「えぇえええ‼︎何で!?」



……耳元で煩い。



「声でけぇよ」

「無理なら仕方ないね」

「あははっ!未空フラれてやんの!」

「フラれたとか言わないでよ!無神経のんちゃん!」

「だって本当のことじゃん」

「本当のことだから傷付いてんの!」

「でも何で立夏くんはやりたくないの?」

「やりたくないって言うか…」



『アイツ等は危ねぇ。何より性格が悪い。でもそんなガキ共をカリスマだのといい学園の頂点に祭り上げている連中がいるのも確かだ。関わらないに越したことはねぇよ』



文月さんは兎も角紀田先生がそこまで言う生徒会だ。
気にならないわけがない。
でもここでの平穏を考えたら下手に関わらないのが身のため。
自分から足を突っ込むなんて以ての外だ。
やっぱり生徒会は無理。どう考えても無理だ。
一度は承諾した手前未空には申し訳ないが諦めてもらうしかない。



そんなことを考えていると、不意に紀田先生の大きな手が俺の頭上に置かれた。



「……何?」

「覚えてたんだな」

「そりゃ…」



あんなに力説されたらね。



紀田先生は文月さんの伝言みたいに言ったが俺にはそんな風に聞こえなかった。
寧ろ生徒会を毛嫌いしてるのは紀田先生じゃないかと錯覚するほど紀田先生の言葉には説得力があった。
今思い返せば生徒会に興味を持つようになったのは紀田先生のせいかもしれない。



「偉い、偉い」

「触るな」



良い意味でも、悪い意味でも。



「ちょっと紀田ちゃん!リカにちょっかい出さないでよ!話はまだ終わってないんだから!」



未空は俺の頭から紀田先生の手を振り払って俺と紀田先生の間に割って入る。さっきの逆だな。



「邪魔すんじゃねぇよ仙堂。立夏は皆のもんだろうが」

「勝手に俺の所有権を共有しないで下さい」



皆って誰だよ。

俺はどっかのご当地キャラか?

マスコットでも天然記念物でも何でもねぇんだぞ。



「それに話はもう終わっただろう。立夏は無理って言ってんだからよ」

「でもさっきはやるって言ってくれた!」

「それは…」



言えない。
流石に本人に面と向かって「生徒会と関わりたくないから無理」なんて言えるか。



「さっきはさっき。今は今だ」

「本人がやらないと言ってんだ。諦めろ」

「………」

「未空くん諦めよう。無理強いは良くないよ」

「そうそう。男なら潔く身を引けよ」

「………やだ」



未空の言葉に目を瞠る。
その声色が妙に落ち着いてて違和感を覚えた。



「お前な…」

「ガキか」



頼稀はやれやれと言わんばかりに頭を掻く。その隣で紀田先生も肩を竦めた。

この2人はその違和感に気付いていないらしい。



「―――生徒会強制令」

「、」



次の瞬間、頼稀と紀田先生の目付きが変わった。


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