歪んだ月が愛しくて1
「お前…」
「これなら文句ないでしょう?」
何故かお互いに視線を逸らさない、未空と頼稀。
「……あるに決まってんだろうが」
そして紀田先生も。
3人の雰囲気はお世辞にも良くない。
そんな彼等の様子を遠巻きに見ていたクラスメイト達は可哀想なことに萎縮していた。何かごめん。
「ふーん…」
紀田先生の言葉に未空が目を細めた。
「最初に言ったよな、コイツはダメだって」
「それが?そんなの俺の勝手じゃん」
「お前の勝手に立夏を巻き込むな」
「未空、いい加減にしろ。自分の立場を分かってんのか?」
「分かってるよ」
俺には普通の学校ってものがよく分からない。
だからこの光景が“普通”と言われれば受け入れられるし“異様”と言われれば納得出来る。
そのくらい未空と頼稀、そして紀田先生を包むオーラが不思議で仕方なかった。
「分かってねぇから言ってんだよ」
「分かってるって。紀田ちゃんもしつこいな」
「分かってるなら何で…っ」
すると何かを察知した葵がすかさず仲裁に入って来た。
「よ、頼稀くん落ち着いて!いがみ合ってたって仕方ないでしょう!先生も!」
「「いがみ合ってねぇ」」
「うん。ただ目逸らしたら負けみたいだから逸らさないだけ」
それをいがみ合うって言うんだよ。
「へー、未空マジなんだ」
希はニヤニヤした笑みを浮かべながら未空の様子を窺っていた。
「マジだよ。俺はリカが欲しい」
「………」
「チッ」
それぞれの一挙一動に希と葵が溜息を吐く。
「ドンマイ」
そう言って希は俺の肩に手を置いた。
「何がドンマイ?」
「いや、モテる男は辛いなと思って」
「大変だね」
何が?
「てかさっきの何?生徒会きょーせー…」
「生徒会強制令な」
「それそれ」
「そっか、立夏くんは転入して来たばかりで知らないよね。あのね、聖学には生徒会の言うことには絶対の決まりがあるんだ」
「……は?」
生徒会の言うことには絶対?
何それ?
「……学校方針だ」
「自主性を重んじるあまり大変な制度を作っちゃったってわけ」
学校方針?
ハッ、
「くだらねぇ」
何が自主性だ。
面倒なもん作りやがって。
「全くだ」
「でもそれに逆らえないのも事実じゃん」
「聖学にいる以上は仕方ないよね」
「そゆこと」
「……俺、納得出来ねぇんだけど」
ムスッと、俺の不満はだだ漏れ状態。
それに追い討ちを掛けたのは未空の無邪気な笑顔だった。
「リーカ、往生際が悪いよ。これから3年間宜しくね!」
……嘘、でしょう。
「………させるかよ」