歪んだ月が愛しくて1



「すいませんね、うちの生徒会長が…。未空の言う通り無愛想が服着て歩いてるような人でして」

「大丈夫です。気にしてませんから」



結局生徒会長からの挨拶はなかった。
これがトップの姿とは…。
文月さんが生徒会を嫌う理由がなんとなく分かった気がする。



「それで今日はどうしたんですか?未空がお友達を紹介してくれるなんて初めてじゃないですか」

「紹介するだけなら何もこんなところに連れて来ねぇだろうよ。何か他に目的があるんじゃねぇの?」

「手短に話せ」



3人の視線が未空に集中する。



「だって今日は定例会の日だろう。紹介するならこの日しかないと思ったんだ」

「お前、まさか…」



すると未空は待ってましたと言わんばかりにニヤッと口元を緩め再び俺の身体を3人の前に曝け出した。



「じゃじゃーん!リカには今日から生徒会の一員になってもらいまーす!」



突然の未空の爆弾発言に世界が止まったような感覚に陥った。



「……え?」



少しの沈黙の後、動き出した世界は想像以上に煩かった。



「は?おま、生徒会の一員って……はぁああああ!?」

「ヨージ煩い!鼓膜破れる!」

「……未空、本気ですか?」

「本気本気、チョー本気。俺リカを一目見た瞬間骨抜きにされちゃったんだぁ」

「……どう言うことだ?」



周りが騒がしい中、会長は煙草を灰皿に押し付けて重たい口を開いた。



「どうもこうもないよ。俺がリカを生徒会に推薦したんだ」

「………」



会長は何も言わない。

でも視線だけが煩いくらいに絡み付く。



「ま、いいんじゃねぇの。お猿ちゃんは本気みたいだし」

「……そう、ですね。未空の推薦でしたら間違いないでしょうし」



何が…とは聞けず、俺は次の言葉を待った。



「じゃあ良いんだね!リカを生徒会に入れても!」

「反対したところで素直に聞くタマかよ」

「ヨージの言うことならきっかなーい」

「何でだよ!?」

「それに全生徒の注目の的である彼にとってはここにいた方が安全だと思いますしね」

「安全…?」

「余計な連中に余計なことをされずに済むと言うことです」

「………」



九澄先輩の言う「安全」の意味が分からない。

悶々とした気持ちのまま更に話が進んでいく。


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