歪んだ月が愛しくて1
「……いくら校則とか命令とか言われても、俺はそれに従うつもりはありません」
校則云々よりも文月さんが作ったものに誰が従うか。
「帰る」
文月さんに反発する思いで未空達に背を向けて生徒会室を出ようとした時、それは未空の手によって阻まれた。
「待ってリカ!」
未空は両手を広げて俺の前に立ち塞がる。
「何で…?教室では入るって言ってくれたじゃん!」
「それは生徒会だって知らなかったから…」
「何で生徒会はダメなの!?俺はただリカと一緒にいたいだけなのに…っ」
そんなこと言われても困る。
元々断るつもりでここに来たんだ。
冷たく遇らったつもりなのに当の本人は一向に引き下がってくれない。
そればかりか陽嗣先輩と九澄先輩まで未空の肩を持って俺を引き止めようとする。
「未空の言う通りです。折角お友達になれたのですから帰るだなんてそんな寂しいこと言わないで下さい」
「何だかんだ言って結構楽しいぜ、ここ」
3人の姿に目を背ける。
こんな俺を必要としてくれる未空には申し訳ないが、だからこそここにいちゃいけないと思う。
もう二度とあの日を繰り返さないためにも。
「……帰ります」
「お願いリカ!考え直して!」
未空は逃がさないと言わんばかりに俺に抱き付いたまま離れようとしない。
「離して」
「やだ!リカが入ってくれるまで離さない!」
「………」
はっきりと拒絶したはずだった。
それなのに何でそこまで俺に拘る?理由は?
未空をそんなにも駆り立てるのは一体何?
……分からない。
未空のことが全然分からない。
「そんなに唇を噛んでは切れてしまいますよ」
「、」
ハッと顔を上げると、九澄先輩の困った顔があった。
無意識に噛み締めた唇がピリピリと痛い。
「……僕達が、怖いですか?」
怖い?
「いいえ」
首を左右に振って否定する。
気遣うような声色に九澄先輩の優しさが窺える。