歪んだ月が愛しくて1
「アンタには関係…「なくねぇよ」
だから即答すんな。
ムカつくな。
「俺様はお前の何だ?超イケメンの叔父様だろうが」
「……イケメン?」
「イケメン」
「寝言は寝て言えや」
「ハッ、相変わらず口悪ぃな」
「アンタは目が悪いんじゃない?」
「本当口だけは達者だな。あーあ、昔はあんなに可愛かったのにな」
やっぱり目が悪いな。
老化か?
「いや、可愛くねぇは嘘だな。可愛げがねぇだけか」
俺の頬に触れて顔を近付けて来る文月さんに俺は眉を顰めて忌々しく吐き捨てる。
「触るな」
いつまでガキ扱いするつもりだ。
もうあの頃には戻れないと言うのに。
「怒ったか?」
「アンタの目は節穴?これが怒ってないように見える?」
「あの頃のことでも思い出したか?怖くて眠れねぇならまた俺様のところに来てもいいんだぜ」
「……黙れよ」
「くくっ、そう怒んなって。俺様はお前のために言ってんだぞ」
「………」
軽薄な笑みと感情を逆撫でするような蔑む声に眉を顰める。
「今更チサのことを想って感傷に浸ってどうなる。アイツがお前だけを見てくれるとでも思ってんのか?あの時だって奴等からお前を引き離したのはこの俺さ…、」
ガンッと、大きな音が文月さんの言葉を掻き消した。
……何も、知らないくせに。
何もしろうとしなかったくせに。
「黙れって言ってんだよ」
その先は言わせない。
アンタなんかに俺達を語らせない。
「……久しぶりだな。お前がそんな風になるのは」
「態と?」
「いや、つい口が滑った」
文月さんは「もう言わねぇよ」と言って流してない方の前髪を掻き上げて苦笑した。
その言動から文月さんの発言が故意であったことを確信する。
俺はこれまでに文月さん以上に性格の悪い……いや、それ以上に歪んだ人間を見たことがない。
他人に踏み込んで欲しくない心の奥底を土足で踏み込んで来る文月さんが昔から嫌いだった。
「でも悪い話じゃねぇだろう。その様子からするとまだアイツ等と上手くいってないようだしな」
それは今でも変わらない。
「それにお前の正体を隠すのにもとっておきの隠れ家だと思うぞ」
「………」
文月さんの考えが読めない。
恩着せがましく「俺のため」と口では言うが、それに何のメリットがあるのだろうか。