歪んだ月が愛しくて1
「勘違いしないで下さいね。誰も未空を責めてるつもりはありませんから。ただ陽嗣は心配しているんです、未空がこれ以上傷付かないようにと…」
「………」
九澄が口下手の陽嗣をフォローする。
「ハッ、誰が猿の心配なんてするかよ」
「話がややこしくなるので黙ってて下さい」
喧嘩の絶えない未空と陽嗣だが仲は良い。
精神年齢が近いこともありいつも2人はガキみたいに騒いでる。
それでも陽嗣は未空よりも二つ年上。本来の性格も加わりあえて自分が嫌な役回りをすることで未空を気遣っていた。
未空もそれは十分に理解しているはずだ。
「……無闇、じゃない」
「あ?」
「俺は無闇に信用してるわけじゃないよ。上手く説明出来ないけど、リカなら大丈夫な気がしたんだ…」
その言葉に今度はこっちが驚かされた。
俺だけじゃない。陽嗣も九澄も、未空の心境の変化に戸惑いを隠せなかった。
「……マジかよ」
「未空にここまで言わせる彼は、一体…」
「………」
未空の心境の変化に危機感を覚える。
それと同時にあの転入生―――藤岡立夏に興味を抱いた。
「明日も誘ったら来てくれるかな…」
「……知るか」
適当に返したが妙な確信があった。
アイツは何れここにやって来る。そしてまた怯えの色すら見せず境界線のような分厚いレンズを隔てて真っ直ぐにこちらを射抜くのだろう。
無意識に口角が上がる。
鏡ノ院の差し金で面倒事が増えるかと思ったが、どうやらそうでもないらしい。今回ばかりは感謝してやろう。
―――藤岡立夏、か。
「……面白い」
『生徒会には入らない。……もう、俺に構わないで』
ただ搾り出した声音にどこか危うさを感じたのは俺だけだろうか。